人斬り刀と幼女と魚
祖父母が死んだ。二人とも老衰で先に祖父が、追うように、眠るように祖母が息を引き取る。味方が居なくなったと、その時思った。
*
龍はドマの出身である。家が剣術道場で、また片親の種族が大体違う家系だ。一般町民よりは少々特殊である自覚はある。だが彼の種族はミッドランダー族で相違ない。派手な赤毛と緑の目は黒髪黒目の多いドマ人の中では異質だろうが、彼の家系を知っている近隣住民は特別扱いはしなかった。極々一般的な幸せを享受していたのだと思う。
龍を最も苛んだのは父親の存在だった。
厳格なアウラ・ゼラの父は一人息子の龍に強く当たり、また母もそんな父を止めようとしなかった。剣術師範なのだからある意味では普通だったが、龍は本来武術に興味が無い質だった。音楽や美術品等そう言ったものに目が行く龍を父が叱責するのは日常茶飯事で、近所に父の怒号が飛べばまたか、と苦笑いをこぼすだけだった。傍目から見ても主観からでも父と息子の相性は最悪だったのだ。
興味のない剣術を押し付けられて泣きべそをかいていた龍の意思を尊重したのは従弟と祖父母だった。たまに遊びに来る従弟は外で遊ぶ方が好きなはずなのにいつだって龍の好きなことを優先させて落書きや年度遊びに興じていたし、祖父は弓と詩を、祖母は踊りと歌を彼に教えていた。祖父が度していた頃の話も、祖母と出会った時の話も、竜姫が両親と言ったクガネの話も聞いていて楽しかった。父に見つかれば叱責されるも祖父が庇ってくれた。辛い訓練で龍が隠れて泣いていたら祖母がおにぎりを握って一緒に食べてくれた。竜姫が自分の友達を龍に紹介して輪に入れてくれた。龍にないものを沢山返し切れないほど与えてくれた。
三人が大好きだった。自分と家族の筈の父と母より、祖父母と従弟が。自分を押し殺さないようにと心を砕いてくれた三人が龍にとっての最愛だった。
*
帝国軍の侵攻が激しくなり出した頃だった。
今住んでいる所が激戦区になりそうだから、と従弟は一時的にアジムステップへ移り会えなくなった。そこから間も無く、祖父母が亡くなった。喪主を勤める父の後ろを、少し後ろを俯いて歩く母の横を、龍は能面で歩いていた。泣きたかった。けれども葬儀中とは言え泣けば父に叱責される。それは龍にとってこの悲しさを否定されるも同然だった。それだけは我慢できなかった。
葬儀を終えて、父と母から離れて、やっと龍は泣いた。突然世界に一人で放り出されたような気持ちを抱えて。
そこから武原家の不和が広がり決裂するまで時間は掛からなかった。理不尽な剣術訓練も、やりたくないと拒絶した後の恫喝も、できないと返した後の理解不能な根性論も。父が投げかけてくるコミュニケーションの何もかもが龍にとってストレスで、嫌悪の対象にしかならなかった。
「稽古中に竹刀を投げるとは何事だ! お前には道場の息子としての誇りはないのか!」
いつだったか、龍が竹刀を投げ捨てた時に父がそんな事を言った。その押し付けられた誇りに、これまでささやかな反抗しかしてこなかった龍の何かが派手に切れた。
ぎ、と音がしたと錯覚するくらい龍は父親だと言う男を睨み付けて吠える。
「ああないね! あんたが勝手に押し付けてきだけで、俺にあるわけないだろ! 好きでもなんでもないものに思い入れがあると思ってるんだったら相当めでたい頭してるよ! 誇りなんてそんなものが大事なら、一人で抱えて一緒に死んじまえ!」
「ッ、若造が舐めたクチを」
「先に俺を軽視したのはあんただ! じいちゃんもばあちゃんも竜姫も俺の好きなことをくだらないと切り捨てなかった! あんたみたいに俺のことを舐めてなかった、尊重してくれてた!」
あんたの独りよがりに付き合うのはもう沢山だ。
それだけ叫ぶと龍は転がっていた竹刀を蹴飛ばして道場の戸も蹴りつけるように開けて出ていく。背中に勘当だ、という怒鳴り声を受けながら上等だと中指を立てる。
二人の騒ぎを聞きつけた母が龍を宥めにきたが、父の肩を持つ女の言葉を一言も受け付けることなく荷物をまとめ、二人に何も言わずその日のうちに家を飛び出した。家にあった自分の私物を全て売り払い路銀にして、父母のつながりを物理的に排除した。竜姫と大きくなったら一緒のをつけたいね、と見栄をはって買ったピアスと、祖父母の遺品である弓と旅装束と、一振りの刀。それだけを持って龍はドマを飛び出した。十二歳だった。
*
苦も楽も同じ位ある旅だった。世間知らず故に利用されただけのこともあったが、同時に無償で龍を迎えて送り出してくれた一族もあった。初めて女の柔肌に触れたその夜、自分に抱えられない好意を受けて、逃げて、傷付けてしまった苦しさも知った。傭兵として雇われた戦場で、一度限りの共同戦を張った仮初の仲間と空が白むまで歌い踊り明かした朝もあった。金に困れば祖父母の話を安物の琴の音に乗せて紡ぐ事もあれば、見も知らぬ人の命に矢を撃ち込んでそれを金に変えることもあった。苦も楽もあった。自分の人生には濃すぎる位。けれどもそのどれもが龍一人だけで完結していた。
オサード大陸からエオルゼア大陸へ渡ってしばらくした日の事だった。黒衣の森で運悪く集落やキャラバンに出会えず、一人野宿をしていた時だった。一人でいると野盗に襲われることを祖父から学んでいた龍はふと近くで複数人の声を聞いて、息を潜めて耳を澄ます。どうやら自分のいる場所から程近い所にキャラバンが居そうだ。しかし時折啜り泣く声に聞こえて腹の底がざわついて仕方ない。
もしこれが自分の気の所為なら途中まで彼らに同行させてもらおう。そう思い立ち上がると龍は声のする方へ気配を殺して近づいた。
下品な笑い声と、女の叫び声。気配を殺しいて正解だったなと龍が呆れ半分で見ている光景は到底呆れながら見られるものではなかった。地面に転がされた少女の裸体。一人だけではなく何人も倒れ伏しそのどれもが痣や血や、白い体液で汚されている。そして今まさに泣き叫んでいる少女の純潔が暴漢によって汚されようとしていた。自分の目的が逸れそうだし、と龍はその場を後にしようとして、
「うわぁっ!」
「! 誰だ!?」
豪快に木の根につまづいて転んだ。顔から行ったせいで帽子は脱げ額を擦りむくと言う大失態つきだ。それでも接触される前には起き上がり腰に差していた刀に手をかけながらあはは、と空笑いを零す。
「いや、あの、通りすがりの旅人なんですけど……ここで致すのはちょっと寒いんじゃないかなって思って」
「何言ってやがる。ふざけてんのか?」
「すいませんふざけました見逃して欲しいです」
す、と両手をあげて降参のポーズを取る。内心舌打ちをしながら龍は自分を取り囲む男達を観察した。
十中八九、ブローカーだろう。我慢できずに商品に手を出したと言う所か。その数八人、平時でも一度にこの人数を相手取るのは正直龍の技量では難しい。
何より彼等の射程距離に入ったから刀を触っただけで、龍はその実刀で人を斬ったことはなかった。日雇いで傭兵業をして人を殺めたことはあっても、その得物はいつだって弓で、その腕前も平凡。到底八人を射止めるのは不可能だと自分でも分かっている。
(刀で隙を作って離脱が積の山かな……文字通り付け焼き刃だし、俺の刀)
父の教えの剣術ではなく、祖父の我流を真似し続けてきただけの刀だ。弓の方が効率がいいし、一人で逃げる時は非常に便利だ。それでも龍が旅の合間に刀を振り続けてきたのは人を斬るためでなくただ自分がそれを忘れてしまったら祖父の事を一つ忘れてしまいそうで嫌だったからという甘え。そんなもので生き長らえられるとは、正直思っていなかった。
男が一人、一息にっ距離を詰め、斧を振りかざし龍へと襲いかかる。
『いいか、龍。胴体を晒してきた相手ってぇのは自分で斬ってくださいつってきてるようなもんだ。的もでけえ、懐入り込んじまえばあとはこっちのもんよ』
ふと、そんな祖父の声を聞いた気がした。そんな事を教えてもらったことはない。だが龍はなんの躊躇いもなくその言葉に体を添わせる。
ぐん、と大きく踏み込んで屈み込む。柄の装飾がわかるくらい強く握り込む。相手の動きが嫌にゆっくりに見えた。
『斬れる、そういう場所が見える時があるんだ。見えたら、一気に抜け』
抜刀。一閃。
悲鳴すら上がらなかった。へ、と間抜けに聞こえた声が男の最後の言葉で後は血がぶち撒けられる水音と、男達の怒号や悲鳴しか聞こえない。
しかし龍にはその喧騒すら遠くにきこえていた。
肉を斬り、骨を断つ。視線で追った先にいた、己の死を理解できなかった男の驚愕した顔。自分に降りかかった血の温かさと、それが冷たい刃を濡らした事実。
ぞくぞくぞくと、龍の背中に何かが走った。恐ろしいのに病み付きになるような中毒性の高いそれ。その感覚の名前を龍は知らない。だが理性がそれはいけないと警鐘を鳴らす。
これは、嵌まり込んだら終わりのものだ。手を出すべきではない。
けれども状況がそれを許さなかった。追い討ちのように龍へ矢が数本飛来する。それを真っ二つに切り裂いた男の遺体を盾に防ぐと遺体の半身片手に射手へ襲いかかる。
恐怖に見開かれた目が、龍の視界に入る。ぞくり、とまた身体が粟立った。
(まあ、いいか。襲ってきたのは)
あちらだし。
そう思うが早いが刀を相手の首めがけて振り下ろす。首と胴が離れ、一瞬後には血が噴き出して赤い雨を局地的に降らせた。
残された剣術士崩れの男たちが一斉に襲いかかってくる。数で押し切れと思ったのだろう。彼等はほんの少しの恐怖心で判断を誤った。
なぜならここは森の中。大人数が一度にこなせる行動などたかが知れているのだ。対して龍はただ一人。
龍に接近した男の胸ぐらを引っ掴み腹に容赦なく刀を突き立てる。痛みに悲鳴をあげる男を引きずり隣接していた男の方へ突き飛ばす。その拍子に抜けた刀で二人の喉と心臓を一突きで命を断つ。肉塊から勢い良く引き抜いて背後に迫っていた男の鳩尾に柄を叩きつける。げぇ、と汚い声をあげて前のめりになり晒されたその首を一太刀で切り落とす。
首が地面に落ちる前に髪を引っ掴み後方で蹈鞴を踏んでいた三人にめがけて無造作に投げつける。うわ、ぎゃあ、ひぃ。そんな声を聞きながら龍は茂みの中に飛び込んだ。
どこに行った、探せ。殺せ。俺たちが殺される前に。そんな声を聞きながら呼吸も気配も潜めてゆっくりと背後に回る。
心臓が早鐘を打つ。頭がくらくらする。目の前がちかちかと瞬いている。身体が熱くて気持ちが昂る。女を抱いている時以上に興奮している。
警戒しているその癖無防備な背中が酷く興奮した。
その背中に刀を滑り込ませて、突き立てて、断ち切った時の彼等の、最期の顔が歪んでいるのに興奮した。
まだ生温かさの残る血に濡れたこの瞬間の高揚が龍の身体を血よりも早く駆け巡る。
ああ、こんなの、やめらるはずがない。
身体が熱い。熱病に犯されたような心地だ。それなのに途方もなく気持ちいい。ずっと果ててさえいるような長い余韻。
無様を晒す死体の中で、龍は自分の身体を掻き抱く。
土と枯草を踏む軽い音が、龍の理性を呼び戻した。
「ッ」
「にゃっ」
咄嗟に刀を構えた龍に、近付いてきた小さな足音の主が尻餅をついた。幾分落ち着いた龍は刀を納めるとゆっくりと立ち上がる。
先程、男たちに襲われていた少女だった。サンシーカー族の彼女は小さな体を丸めて、黄色いまんまるな目をこれでもかと見開いて龍を見上げている。その視線は恐怖を色濃く写し、三角形の耳は見ているこちらが可哀想になるほど垂れ下がって尻尾は足の間で丸まっている。
確かに、怖いよなぁこれ。
どこか他人事のように考えた龍は顔についた血を無造作に拭うと、彼女から距離をとったまま声をかける。
「……えっと、うん。もう大丈夫」
「……」
「怖いおじさんたちは、俺がやっつけたから。もうお家に帰れるよ。大丈夫」
どの口が大丈夫って言ってんだ。
話せば話す程どんどん冷静になってきた龍は自分の発言に頭を抱えたくなった。自分を襲ってきた男とは全く関係ない男が一人残らず切り捨てた上に一度は自分にその凶器を向けたのだ。そんな男が大丈夫、だなんてちゃんちゃらおかしい。おかし過ぎる。
長い、長い沈黙だった。少女は固まったままだし、龍も黙ったままだった。濡れていた血が乾いて皮膚を引っ張り少し痛いと思うまで、二人揃って固まっていた。
居た堪れなさで逃げ出したのは龍だった。じゃあちょっと水浴びしてくるから、と謎の言葉を残し川のある、自分の野営地の方へ全力で駆け出す。足場が悪い上に靴の裏の血が中途半端に濡れていたせいで何度も転び、川に出る頃には龍は先程の何倍も汚くなっていた。
隠してあった荷袋を引っ張り出し川辺まで満身創痍(ただし転倒しすぎた結果である)で歩み寄る。服を無造作に脱ぎ捨てそのままざぶざぶと水をかき分けて歩いていく。
夜の水の冷たさが、中途半端に燻ったままの熱を連れ去っていった。そしてようやく先程の自分の状態が異様であることを認識する。
一度、得物は違えどよく似た状態になった傭兵がいた。彼は人の頭を銃で撃ち抜くのを好んでいたが、まさか自分がそうなるとはおもいもしなかった。
(殺すのが好きだったのかな、俺)
流れる川の水面に映る自分の顔を見る。もう十七年も見てきた顔だ。それが今日、どうなっていたのか知るのが恐ろしい。けれども、人を殺すのが好きなのとは何だか少し違う気がした。言い訳じみていると思うと同時に、なんとなく思考を巡らせる。
(殺すのが好きなら、もっと早くああなってそうだよな……けど今までそうなったことないし……)
手慰みにぱしゃぱしゃと水面を叩く。暫く悩んでいたが結局わからずじまいのままだった。
(とりあえず、あの死体とかだけでも片付けよう。あの女の子は帰れたかな)
帰れてたらいいな。
そう思いながら川から上がろうとして、また水の中に戻る羽目になった。
先程思い出していた少女がじい、と木陰から龍を覗いていたのだ。全く気配を感じなかったから驚いて転んだのだ。
鼻から水が入ったせいで咽せる龍を不思議そうに眺めていた少女はひょこんと茂みから飛び出して岸辺から龍を覗き込む。
「おにいちゃん、だいじょうぶ?」
「だ、だいじょうぶ」
しどろもどろになる龍にそっか、とだけ返した少女はそのまま龍の荷物の近くに座り込んだ。物を盗る気か? と一瞬身構えたがどうやらそうではないらしい。まだ? と言わんばかりに龍を見る少女に慌てて川から上がる。
ごわついた手ぬぐいで頭を拭いていると、少女が動いた。龍の血まみれの旅装束を抱えると川で洗い出したのだ。突然の行動に龍が思わずえっと声をあげる。
「たすけてくれたから、おれい」
「あ、うん。ありがとう」
拙い手つきで洗う少女に、龍は彼女の目的が読めずに困惑した。年の瀬は八つか九つ、それ位だろう。物盗りの子供には何度か遭遇したことがあるが、それらしい雰囲気もない。なかなか取れない血に顔を顰めてさえいる。そうなってくるといよいよ少女がどうしたいのかわからなくなってくる。そう思った時だった。
くう、と小さな音が聞こえた。どうやらそれは少女の方から聞こえてきたようでああ、と龍は納得した。予備の服を着てそのあたりにある枝を刀で尖らせて、岩の下に突き出す。
手応えを感じて引っ張り出せば魚が数匹突き刺さっていた。もう少しとるか、と龍が身を屈めている間、少女は難しい顔をしながらずっと血の染みと戦っていた。
ぱち、ぱちと枝が小さく爆ぜる音がする。魚を獲ってきた龍を見て顔をぱっと明るくした少女は相当腹を空かせていたのだろう。勢いよく口にして、あつつと溢しながらも二匹をぺろりと平げた。ちなみに服は彼女の身長でも届きそうな木の枝に蔦を引っ張りそこに引っ掛けられていた。なんだかなぁ、と思いながらもずっと無言でいてもわからないので取り敢えずなんとなしに声をかける。
「ねえ、お家帰らなくていいの?」
「おうち、わかんない」
「? どこから来たの? お父さんとお母さんは?」
「あのねえ、なっちゃんはねえ、きがいっぱいあるとこからきたの。おとしゃんとおかしゃんが、なっちゃんはいいこだから、おそとでおしごとたくさん、がんばってねってばいばいした」
「……なんのお仕事って言ってたの?」
「わかんない。おしごとおしえてくれるひとがね、こわいおじさんたちにごちんってされて、うごかなくなっちゃった。いっしょにきたこたちもこわいおじさんにいじわるされてうごかなくなっちゃった。だから、なっちゃんなにしていいか、わかんない」
最後の方は鼻声だった。軽い気持ちで聞いた事の返事が思った以上に重すぎて龍は頭を抱えたくなる。
つまりこの少女は両親に売られた上、恐らく正当な雇い主が賊に殺されたのだ。寂しい思いを耐えたはずなのにその矢先に不運にも恐怖に見舞われていたのだ(自分もその怖い思いをさせた方に加担してしまったのだろうが、まあそれはそれとして)そんな彼女が通りがかりで豪快に人を斬って捨てたとは言え結果的には助けた龍についてくるのは至極当然の理屈だった。
しかしそれは彼女の理屈であって龍の理屈ではない。けれども手を出したからには責任があるわけで。
「……人が沢山いて、怖くない場所まで一緒にくる?」
その一言に少女は頷きながら泣き出した。不安だったのだろう。せめてこの子の親がわかりそうなところまでは送り届けよう。短い期間なら道連れも大丈夫だと、その時の龍は思った。
*
結果的に言えば龍と少女の旅は三年にも渡った。彼女が幼く自分の家の帰り道がわからない以上に、彼女を乗せていた荷馬車には彼女の身元がわかるものが何もなかったのだ。ナツキ、という名前だけははっきりしたものの氏がわからずサンシーカー族のどの部族かはっきりしない。便宜上サベダーという氏を仮に付けたのだが、いつしかそれがナツキにとっての本当の氏になってしまっていた。
他にもサンシーカーと言えば砂漠の一族なのだが彼女の暮らしていた所は恐らく森、それも雪が降っていたと言うのだからクルザス地方付近の様で、彼女たちの伝統からは程遠い暮らしをしていたらしい。だからといって難民と言うわけでもない立ち位置にほとほと頭を抱えた。
ただでさえ排他的で竜詩戦争真っ只中なその領地にひっそり暮らすナツキの家族のことを知っているヒトはおらず、都市やエーテライトが設置されているような大きな町や村で聞き込みをしても手かがりは得られず仕舞いだった。
そろそろ潮時か。
ナツキの家族を探し始めて三年、なんの収穫もなくただいたずらにナツキを連れ回しただけの結果に龍は小さな溜息をついた。九つだったナツキは十二に、十七だった龍は二十になっていた。龍はともかくとしてナツキは本来近しい年の子と遊びたい盛りの筈なのだ。旅先で立ち寄った場所で友達ができてもそれは期間限定で短いもの。旅立つ度にナツキは悲しそうに顔を歪めている。そんな環境がいい物であるはずがない。
反面どこか、ナツキと別れる事を良しとしない自分がいる事も龍を悩ませた。決して楽な旅ではなかったはずなのに、ナツキは知らないものをみるとこれはなに? あれは? と問い、嬉しい事があればすぐに龍に伝える。防衛のために、と小さくて軽い機銃を渡せば手入れや使うための訓練は頑張っていたし、戦えない分洗濯や後片付け等そう言ったところで龍を支えていた。何より一人で見た世界より二人で見ていた世界の方が余程広く感じられた。
最早龍の妹の様なものだった。血の繋がりもない、種族さえ違う。それでも龍にとって祖父母と従弟以外で初めてできた繋がりがナツキだった。誰かが笑えば胸の奥がほんのり暖かくなることを、誰かが泣けばきゅうと締め付けられることを龍に教えてくれたのは間違いなく彼女なのだ。
だからこそ龍は、次の町でナツキの引取先を見つけて離れようと言う決心を先延ばしにし続けてきた。
*
青い空に、色をそのまま写した様な海。白い珊瑚岩が高い水飛沫の様に聳え立つ海都リムサ・ロミンサ。クガネからエオルゼアに渡航したきり来ていなかった都市に、龍とナツキは来ていた。というのも道中一緒になったキャラバンの巴術師が使役していたカーバンクルをもっと見てみたい、と言うナツキの願いを叶えるべく観光目的で立ち寄ったのだ。念願のカーバンクルを見てはしゃぐナツキを横目に次の旅の準備を整える。買い足す物資は一人分だった。後はイエロージャケットに彼女の身分を託す、それでナツキの安定しない日々は、龍の一人ではない旅の日々が終わる。
嫌だなぁ、と思う自分の心に蓋をする。別れ際きっとナツキは泣いてしまうのだろうけど、そうだったらいいと思ってしまう。
「にゃっ!」
「にゃっ!?」
考え込んでいた龍の耳に聞き慣れた悲鳴と、聞いた事はないがよく似た悲鳴が飛び込んだ。何事だと振り返ればナツキが真っ白なミコッテ族の少年とぶつかって転んでいた。二人が持っていたであろう荷物が散らかっている。そこにゆっくりとアウラ・ゼラの男性が近寄っているのが見えて喉が鳴った。
アウラ・ゼラは父の種族。
たったそれだけの事で龍の不愉快指数は跳ね上がり名前も知らないその男性への嫌悪が吹き出す。そんな男にナツキを近寄らせたくないと、反射的に思ってしまった。
男が二人に近付くより先に龍がその間に滑り込む。
「あ、龍くん」
「すいません、大丈夫でしたか?」
きょとんとするミコッテの少年の目も見ずに他人行儀な一言を言い放つ。何をしてるんだ、と理性がそう言うが感情は言うことを聞かなかった。それきりだんまりになる龍に少年が背後にいる男に声をかけた。
「ベル、おれこの子にぶつかっちゃった」
「だから走るなって言ったろ? すいません、うちのフリーカンパニーの組員が失礼しました」
そう言いながら男は何かを差し出しながら龍の前に膝をつく。ナツキがぶちまけた荷物だった。は、と龍は思わず目の前の男を見る。
髪も肌も真っ白な男だった。ロランベリーの様な赤い目が気遣わしげに龍とナツキを見ている。
あ、親父と違う。
そう思っただけで龍の中から嫌悪が抜けていった。同時にすごく失礼な態度をとっていたことを自覚して慌てて頭を下げる。
「い、いえっ! こっちこそなっちゃ、連れが失礼しました!」
「? なっちゃって言うの?」
「うん。おれナツキだからなっちゃんって言うの」
「女の子なのにおれっていうの?」
「うん、龍くんの真似なの! おそろいなんだよ、いいでしょ!」
「いいなあ! おれもねーちゃとおそろいであたしって言おうかな!」
「アキ、それはリコが色んな意味で大変なことになるからやめとこう」
子供二人が勝手に盛り上がり始めたところを軽く止めながら男は不器用にはにかみながら龍に手を差し出す。
「こんな所で座り込むのもなんですから、良ければ移動しませんか? あの子達も話したそうなので、貴方が迷惑でなければですけど」
丁度今から飯でも食おうかって話、してたんです。よかったらいっしょにどうですか? 男がそういうとナツキの方からくぅ、と小さな腹の虫が鳴き声をあげた。おなかへった! と跳ねるナツキに龍は万言を飲み込んで是非、とその手を取った。
「……でね、砂漠でおしゃかな釣ったりしたんだよ! すなの中からおしゃかながばーんって! それを龍くんがぴょーんって!」
「すげええええ! ばーんってなってぴょーんしたのか! なっちゃんとりゅーは凄いんだな!」
ナツキのたどたどしい話に少年、もといアキがビスマルクエッグサンドを口いっぱいに詰め込みながら感心しきりに頷いた。すごいでしょ! と胸を張るナツキにおれはねー、とアキが負けじと話始めれば今度はナツキがミコッテ風海の幸串焼きを口にいれたまま大はしゃぎする。おかげで調理師ギルドの組員に注意を入れられてしまったが幾分嬉しそうなナツキに龍はほうと息をつく。目の前でワインの入ったグラスを傾けている男を視界に入れながら、自分も水の入ったグラスに口をつける。
「いや、まさか龍殿がディア一家と面識があったとは。うるさかったでしょう、俺の家族」
男改めアベルは苦笑しながらグラスをそっと置いた。彼の名前を聞いた時、ディアボロスと言うアウラ・ゼラにしては変わった氏にもしかしてと思い聞けば、過去一人で旅をしていた時無条件に龍を迎え入れた一族の出だと聞いて驚いた。今まで何人もの人間と一時のみとはいえ関わってきたのに実際その縁者に会うのは初めてだったのだ。それにディア一家(一族ではなく一家と称するのが唯一の習わしらしい)と過ごした期間は短かったものの誰も彼もが気さくで優しくて、他人のはずの龍を身内の様に可愛がってくれた。祖父母との事を思い出して別れるのが辛いとさえ思った程。まさかリムサ・ロミンサでこんな形でまた関われるなんて。
歓喜がバレてしまわないように努めて冷静に、けれども親しみを込めて龍は目を細める。
「いえ、とても賑やかで良くしてもらいました」
「はは、そうでしょうね。人と関わることが好きな連中の集まりですから。龍殿の迷惑になっていないのなら安心だ」
少しだけ乱暴な言葉だが、それでも優しい声が耳をくすぐる。彼が身内を大切に思っているのが痛い程伝わった。
アキやナツキの話も交えつつ雑談に花を咲かせる。そんな中龍はふと考えた。
(アベルさんのフリーカンパニーでなら、なっちゃんを預かってもらえないかなぁ)
ディア一家は相撲でその年の族長を決めてしまう程大雑把だが、他人ですら他の害意から守ろうとする程優しく心強い人たちの集まりだ。種族が違い数も多いのに不和から程遠い、そんな一族の出の人ならナツキを迎え入れてくれはしないだろうか。
「ベル、なっちゃんに魚教えたいからちょっと漁師のおいちゃんとこに行ってもいい?」
「ああ、いいぞ。ただナツキちゃんと離れない様にな。何かあったらリンクパールで呼んでくれ。小遣いは?」
「ある! じゃあ行ってきます!」
言うや否や、アキとナツキはビスマルクを飛び出していく。その様子を苦笑しながら見送ったアベルが、ふと笑みを引っ込めて龍を見た。
「何か、困りごとですか?」
「えっ」
「いや、話の内容は検討がつかないんですけど言いたそうにしてるなぁと」
あの子達がいると話しづらそうだったので。ワインを口にしているアベルに龍は目を瞬かせた。まさか見通されているとは思わなかったのだ。話をしている時はどこにでもいる、少しひかえめな男性だと思ったのだがその観察眼は龍の想像よりも鋭かった。きっと彼はフリーカンパニー内でも重役なのかもしれない。ナツキを引き取って守ってくれるのかもしれない。自分では成し得なかったナツキの両親を引き合わせてくれるかもしれない。
もしこれを逃したら、ナツキは一生根無草だ。そんなこと良いわけがない。
震えそうになる手を思い切り握り込んで、龍は口を開く。
「実は、お願いがあって」
「お願い?」
「なっちゃ、ナツキのことです。彼女は黒衣の森で俺が保護した子なんです」
「……詳しく聞いても?」
アベルがかたん、とグラスをテーブルに奥。龍は小さく頷いて続けた。
「彼女の言葉が正しければ、彼女の親に売られたそうなんです。そこを賊に襲われていて、そこで出会ったんです。最初は近くの町で別れるつもりでした。けど、ナツキが両親に会いたいと……で、三年くらい一緒に旅をしてナツキの両親を探したんです」
「見つかりましたか?」
「いえ……だめでした。俺じゃ見つけられなかった。だから、アベルさんの所のフリーカンパニーにナツキを在籍させてあげてもらえませんか? そしてナツキの両親を探してあげてほしいんです」
声が震えそうになった。じい、と龍を見る赤い目がそら恐ろしくなった。色々見透かされそうで怖かった。
「出会ったばかりで厚かましいお願いだとは思います! でも、今のままじゃナツキにとっての人との繋がりは、ずっと俺だけしか残らない。そんなの良いわけがない、絶対良くないんです! けど、頼るあてもなくて、だから」
「……龍殿は、良いんですか」
逃げる様に捲し立てた言葉を、アベルの静かな声に遮られる。その言葉の意味が飲み込めず、けれども何かを返さなければと理解しないまま良いんです、とだけ呟いた。
痛い程の沈黙が、少しだけ流れる。
「……俺たちは一向にかまいません。幼いけど、それは未来の新しい力だ。断る理由になりません。けど、フリーカンパニーの空気がナツキちゃんに合うかどうか一度試してみましょう。合わなければそれこそ彼女の為になりません……これからご予定は空いてますか?」
「……宿も取ってないので、大丈夫です」
掠れた声でそれだけ返すとわかりましたとアベルが声を和らげる。
「でしたら、少し遠いですがうちの拠点にご招待します。シロガネなんです。船で移動するんで三泊分くらいは準備しましょうか」
ひゅ、と喉が鳴りそうになった。自分の故郷に程近い場所、隣接してると言ってもいい場所。もし両親に会ってしまったら、そんなことが頭をよぎる。けれどもそんなことよりもナツキの今後の方が大切で、ナツキを預ければすぐにでも出ていけば良いのだ。
ええいままよ。半ば投げやりな気持ちのまま龍は了解した。アベルが胸の内の感情に気づいていません様にと願いながら。
*
リムサ・ロミンサから旅立って三日。一向はオサードの地を踏んでいた。陰る龍の心とは裏腹にクガネは遠く感じる程鮮やかな青空に覆われていた。初めて見る東方文化にナツキはアキと共に大はしゃぎしているのだが、クガネの都内には入らずそのまま船を乗り継ぎシロガネ住居区へ向かうと聞いたナツキは耳をぺたんと寝かせて露骨に顔をしかめる。どうも、年齢の近いアキと一緒にいて普段抑えている我儘が溢れたらしい。ナツキの頭を撫でながら宥める龍は、そんな我儘すら今まで我慢してたのかと少し後悔した。三年間一緒に居て初めて見る顔だったから動揺したのもある。そんな龍の後ろ姿を、アベルはじいと見つめていた。
*
「ただいまー!」
アキがある建物のドアをほぼ蹴破るように開けた。蝶番が悲鳴をあげる音が驚くほどの音量で響き渡ったというのに龍とナツキ以外の人物たちは驚きもしなかった。ちらりと見たかぎり、軽食店のような内装だ。フリーカンパニーと行っていたはずだが、と龍が小首を傾げる。
「おかえりなさーい! んーアキ〜お姉ちゃん寂しかった〜!」
それを遮るように、ムーンキーパー族の女性がアキの勢いに負けず劣らずの勢いでアキに抱きつき頬擦りしながらその顔をだらしなく蕩けさせた。アキは慣れているのかただいまーと女性の背中をぽんぽんと叩いている。それを褐色の肌をしたミッドランダー族の男性が呆れた顔で眺めている。その奥で黒髪のこれまたミッドランダー族の男性が我関せずと掃除をしているし、アウラ・レンの男性がフォレスターの女性が何かを話し込んでいる。
何というか、自由すぎる。龍は思わず遠くを見た。思っていた以上に闇鍋のようなフリーカンパニーで果たして俺の判断は正しかったのだろうかと自信さえ喪失しかける。が、一度頼んだ手前今更断れない。最も、龍の判断よりもナツキとの相性のが重要なのだが。
「ベル坊、その二人お客さんやろ? そないなとこ立たせんと席案内したり」
会計の所に座っていた、独特な訛りのサンシーカー族の男性が龍達を見てにんまりと笑みを作りながら声をかけてきた。その笑顔が胡散臭くてアベルが騙されちゃいないかと思わず彼を見あげる。
「ああ、店の客じゃないんだ。ルカ、俺の部屋に通すから帰ってきた奴に大人しくするように伝えてくれ」
「また拾たんか! 別にええねんけど」
「はは、ルカには世話かけるなぁ」
「報酬分配の意味でほんま世話したってますわ。構へんけどね、性分に合っとるし」
はよ連れたり、と手を振る男性に頼むよと伝えてアベルは龍を見る。ばちりと目が合ったのが少し気まずくて龍は思わず目を逸らすが、アベルは特に気にしなかったようでこちらです、と龍達を案内しようとした。
ひょこり、と覗き込んだ小さな影を視界に入れなければそのまま部屋へと案内されていただろう。その影はじっと龍とナツキを見ている。プレーンフォーク族とアウラ・レンの少女だった。年の瀬はナツキと同じくらいだろうか。アキがただいまーと二人によっていく。その様子をナツキがどこか羨ましそうに見ているように思えて龍は閉口した。
何といえばいいのかわからないのだ。龍はナツキを呼び戻す言葉は言えど行っておいでと背中を押したことはない。それに、自分はナツキのことで話をしにいくのに当の本人がいなくて大丈夫なのだろうか。そんな懸念を、アベルが一蹴した。
「ナツキちゃん、あの子たちは君が気になるみたいんだが、良ければ一緒に遊んでくれないか?」
「えっ!? いいの!?」
「もちろん。アキも一緒に行ってやってくれるか?」
「いいよ! なっちゃんいこ!」
「うんっ!」
「アキ! 屋根の上から飛び降りるのは絶対ダメだぞ! 普通の子は怪我する……って聞いてないなこりゃ」
「俺が見ておこう」
「私も手が空きましたので一緒に見てきますわ」
「天羽殿、すいません。頼みます……フィオナも頼む」
先程まで話し込んでいた二人に世話を任せてアベルは改めて、と龍を部屋へ通した。
*
こぽり、と水の音が青い部屋に響き渡る。天井まで届きそうな水槽が空気の泡を吐き出すのを見ながら龍は改めてアベルと対面した。彼の個室は応接室と兼用らしいのだが雑に隠された酒瓶が見え隠れして彼が相当酒好きであることを伺わせる。ただその酒瓶に中身があり暴飲するタイプではないのだろうな、と龍はどうでもいいことを考えた。
「龍殿、貴方から見てここはどうですか?」
アベルが穏やかな声音でそんなことを聞く。どんな顔をしているのかはわからない。何故なら龍はアベルの顔を見れないからだ。今から決めることを本人抜きで、人様に彼女を押し付ける事だと自覚しているから。後ろめたさからアベルを見れなかったのだ。
「……個性的な人たちが多くて、気ままで、思っていたよりずっと賑やかだなと」
ただ質問の意図は何となくわかっていたから当たり障りのない言葉で返した。一拍の間の後、アベルから苦笑する声がする。
「正直に言っていいですよ。騒がしさの闇鍋見たいでしょう?」
「んんっ」
まさに自分が最初に思った事を面白おかしく言われて笑いが堪えきれなかった。変な声を出した龍にアベルがやっぱり、と一緒になって笑う。その笑い方が自分の面倒をよく見てくれたディア一家のアウラ・ゼラに良く似ていて心地よかった。
「さて、龍殿。これは俺からの提案なんですが」
「?」
「貴方もうちに在籍しますか?」
思ってもない申し出だった。口を開けてアベルを見た龍にどう? と穏やかな視線を向けている。思わずはい、と言いそうになった。
「……いえ、俺は遠慮します」
それを堪えて、龍はアベルの誘いを蹴った。だって、自分は人斬りだから。こんな穏やかで賑やかな場所は場違いで、ナツキを預けるのだって誤って斬ってしまいたくないからで。全部自分都合でヒト一人の人生を相手に押し付けてる。何より自分ではナツキの両親を見つけてあげられない。どうしたって祖父母と従弟の記憶と比べてしまう。
そんな人間が、誰かと笑って長くを過ごすなんて烏滸がましいにも程がある。自分がどうしようもない生き物だと初めて知った。
「……俺は、まだ旅をしたいから。何処かに所属なんて、考えられないです」
丸ごと嘘を吐き出して苦笑する。しばらくの沈黙の後、そうですかとアベルは小さく零した。
きっと今の無音は、龍の事を汲み取ってくれた上で追わない事を選んでくれたアベルなりの気遣いなのだろう。それ以上なにも言わせない、と言わんばかりに龍はナツキをお願いします、と頭を下げた。
*
アベルと龍が部屋から出ると、ちょうど泥だらけになったナツキたちが天羽とフィオナに連れられて近場の温泉へ行く所だった。どうも、アキが死ぬ程抵抗したらしくぐったりとしながら天羽に担がれている。ナツキはそれを見ながら笑っていて、ふと視線が龍の方へと向いた。
「あ! 龍くん! ねえねえ、今からみんなでおんせんいくんだよ! 龍くんもいこうよ!」
まるでさも当然のようにナツキが龍を誘う。それを嬉しいと思う反面、もうその役目は終わったのだと理解する。
「ううん、俺は行かないよ」
「え!? どうして? 龍くんお風呂すきでしょ?」
「俺はもう、クガネに行くから」
「えっ!? もういっちゃうの!? まってよ、おんせんでるまで……」
「ゆっくり浸かっておいで。なっちゃんはここで住むから」
え? ナツキが呆気に取られた顔をする。最後の最後まで卑怯だな、と心底自分に嫌気がさす。けど、嫌われた方がきっとどっちも寂しくはないだろう。その思いのまま龍は勝手を口にする。
「最初に会った時言ったでしょ? 人が多い所まで一緒に、って。ここは優しい人が沢山いるから、なっちゃんの旅はこれでおしまい」
「え? え? 龍くんは?」
「俺は行くよ。大丈夫、アベルさんがなっちゃんのお父さんとお母さん、探してくれるって約束してくれた。アキくんとか、他にも友達ができたんだろ?」
「う、うん! そうだよ! フィニとネイトっていうの! なかよくなったよ!」
「そっか……もう、仲良くなった子とバイバイしなくていいんだよ」
そっと、ナツキの頭を撫でる。これがもう最後だから、もしかしたらもう会えないかも知れないから。これで終わり。
「なっちゃん、良い子にするんだよ。沢山お手伝いして、沢山遊んで、お父さんとお母さんに会っておいで」
じゃあね、バイバイ。
龍はナツキの顔を見なかった。ナツキが俯いていたのも合ったが、素直にうん、うんと言葉の合間に頷いていたから。思ったよりもすんなり聞き入れたナツキになんだか肩透かしを喰らったような気になって、けれども自分が半ば放り出すのだからこのことについて恨言を言うのもおかしくて。気持ちがまとまらないまま、フィオナと天羽にナツキをお願いしますと頭を下げて龍はナツキを置いて、シロガネ居住区を後にした。
*
龍が出て行ってから、ナツキは少しだけ呆然としていたように思う。その後は目に見えて元気の無くなったナツキを歓迎するかのようにリコやルカ、他に子供好きな面々が声をかけたり、一緒に遊んだりした。アキはやるなと言ったのにも関わらず屋根からドラゴンダイブを放ち買い替えたばかりの木人を木っ端微塵にしたし、レイは元々面倒見が良いタイプだからか頼んだ訳でも無いのにルカが調子に乗らないよう監視しつつナツキと子供達を交互に肩車だのおんぶだのと常に担いでいた。一等喜んでいたのがリコとノエルで、久々の女子加入でテンションが高いの何の、ナツキ(と巻き込まれるようにネイトやフィニ)に自分のお下がりをあてがってはあれもいいこれもいいと着せ替えていた。意外にも涼が着せ替え人形になってぐったりしてきたナツキを庇い、静かに構っていたのが印象的だったな、とアベルは思う。
大人も子供も関係なく日が沈むまでたっぷり関わってきて、ナツキは次第にはしゃぐようになった。半日足らずでよくもまあ馴染んだもんだと思うが、どこか空元気なような気がする。と、くいとアベルのコートの裾が引っ張られた。何かに引っかかったか? と思い下を見ればナツキが暗い顔でアベルのコートの裾を掴んでいた。きゅ、と握り込まれた手は頼りないほど小さくて、尻尾も耳も下へ垂れ下がっている。アベルがしゃがみ込んで顔を覗き込めばどこか泣きそうな顔のナツキが黙り込んでいた。
「……お散歩しようか」
アベルの一言にナツキは黙って頷いた。
*
ざあざあと潮が押し寄せては引いていく。リムサ・ロミンサの打ち付けるような激しさはそこにはなく、ただ小さな波が緩やかに白い模様を描いては消えていく。柔らかな砂を踏みながら、アベルとナツキは黙って歩いていた。きっと言いたい事があるから自分を呼んだのだろうと思ったアベルはナツキが話し出すのを待つ。思えば、アベルが聞いたのは龍の要望であって当事者のナツキの話は聞けなかったのだ。本当ならあの話が終わった後すぐにでも二人の話をすり合わせる予定だったのだが龍が思ったよりもフットワークが軽く捕まえられなかったのだ。
(まあ、今更言い訳にしかならないか)
龍は露骨だった。本当は離れたく無いと顔にありありと出ていた。アベルは龍が望めば二人分の席を用意するつもりだった。けれども龍はそれを蹴った。本人は気づいていないだろうが、未練がましい顔のまま。
「……おれは、アベルくんの子になったの?」
ナツキの声が、アベルの角に響く。そうだよ、と極力優しくそういうとほんの少しだけ表情が緩んだ気がした。そういえばナツキは実の親に売られたと言っていたんだったかと思い出す。
「ナツキちゃんは皆の家族になったんだよ」
「……おとしゃんとおかしゃん、探してくれるって龍くん、言ってた」
「もちろん。すぐに見つからないかもしれないけど、皆に助けてもらって探すよ」
「アベルくんは、おとしゃんとおかしゃんが見つかったら、おれとバイバイするの?」
泣きそうな顔だった。先程よりも顔をしわくちゃにして、涙を零していないのが不思議なくらい歪んだ顔でアベルを見ていた。
致命的にすれ違っている。アベルはそんなことを思っていた。龍はナツキの事を最優先に自分の元へ預けて行ったが、ナツキにとって龍はもう家族だった。自分だけの人生がナツキにとって良い訳がないと彼は言っていた。だが彼女にとってもう龍は掛け替えのない家族で、つまりナツキは二度も家族と離れ離れになっている。
次も見つかったらもう家族じゃなくなるの? ナツキの、今にも揺らいでしまいそうな目はそう問い掛けていた。
ああ、柄じゃ無いんだけどなぁ。そう思いながらアベルはゆっくりとナツキの頭を撫でる。
「そんなことはないさ。ナツキちゃんのお父さんとお母さんが見つかっても皆とずっと家族だよ」
「ほんと?」
「本当さ。アキもフィニもネイトも、ナツキちゃんがいなくなったら寂しがるし、リコとノエル殿も妹が増えたみたいだと大喜びしてたんだぞ? それに言わないだけで、レイも天羽殿もナツキちゃんと楽しそうだったし、フィオナとルカだって何を教えてあげようってわくわくしてるんだ。それに涼殿は、普段俺たちとあまり喋らないのにナツキちゃんに次はどのミニオンを見せてあげようって言っていた。君はお父さんとお母さんが見つかってもここにいてもいいし、本当の家族の所がいいならそっちに帰って、時々俺たちが会いに行くのもいいんだ。さよならしなくても良いんだ」
「でも、龍くんはバイバイした」
それを言われると流石に言い返せない。彼女にとって一番はやはり龍なのだ。きっと彼にしか埋められない所なのだ。
だが、アベルはにこりと笑ってナツキの頭を軽く叩いた。
「大丈夫、すぐに会えるさ」
何のことか分からず首を傾げるナツキにもう帰ろうか、と声をかける。今日はナツキちゃんが眠くなるまでパジャマパーティーするってリコたちが張り切っていたぞ、と言えばぱっと笑顔を見せながらアベルの手を握って歩き出すナツキを見てアベル思考を巡らせる。
龍は、読み違いをしていた。アベルはこのフリーカンパニーの幹部ではない。正真正銘フリーカンパニー設立者、マスターであること。そして気付かなかった。ディア一家の家族に対する情の深さと、アベルという男の執拗さと、時折とんでもないぶっ飛び具合を発揮する質に。
少しだけ浮き足立つナツキをリコたちに預け、その足でアベルはルカの個室へ向かう。命の形として歪んだ彼は寝る必要が無いから今も起きて書類をまとめているか怪しげな薬品の実験をしているだろう。煙が漏れているドアを叩く。
「ルカ、頼みたい事があるんだ」
なんやの、とのっそり出てきた部屋の主に事情を伝えながら、アベルは明日の予定を思い出す。
明日は、あいつがここへ立ち寄る日だ。
*
早朝、望海楼周辺はちょっとした騒ぎになっていた。その中心にしたのは龍とアベルだった。なんだなんだと集まる人々は話の内容を聞いてなぁんだ、と踵を返していくので本当に小さな人集りではあったのだが。
「だから! 俺はお断りしたはずなんですけど!」
「そう言わずに!! 頼む!! 働き手が欲しいんだ!!!」
鬼気迫るアベルに肩を掴まれて龍は悲鳴を上げていた。夜が明ける前にクガネを出ようとしていた龍の目の前に書類を手にしたアベルが仁王立ちしていたのだ。忘れ物でもしたのか? と龍がアベルに声をかけるとナツキのフリーカンパニー加入手続きに保護者としてサインをくれ、と頼まれ自分の名前を書いてからこれがナツキではなく龍が加入する旨の書かれた書類であることに気が付いた。どういう事だと問い詰めればアベルは昨日は引いたが実際成人の組員が少なくやっぱりうちに来て欲しいと言う、とんでもなく華麗な手のひら返しを見せ付けた。納得できない、自分は旅に出たいと控えめに伝えるもアベルが首を縦に振る事はなく、言い合いは徐々にエスカレートしていきいよいよ悲鳴と悲鳴のぶつかり合いのような様相となっていった。
「おい、何を騒いでいる!」
二人の悲鳴を遮るように怒号が飛んだ。視線を向ければ赤誠組の侍だった。が、最初こそ目を釣り上げていた赤誠組だったが、アベルの姿を見るや否や瞬く間に呆れた顔にかわる。
「ディアボロス殿、また貴殿の組員の騒ぎか?」
「ち、ちが」
「そうですそうです! すいません毎回毎回うちの組員がお騒がせして!! 特にミズミが本当にすいません!!」
違う、と否定しようとした龍の言葉を強引に割り込みアベルが肯定する。最早言ったもん勝ちである。その強引さに龍があんぐりと口を開けている間に二人の話は進んでいく。
「全く、貴殿は組員をちゃんとまとめるつもりがお有りなのか? まあ、あの個性の強いミコッテ属の御仁は仕方ないと思うが……」
「は、はは……そう言われると辛いところで……」
「全く、しっかりなさらぬか。ふりーかんぱにー、という組織の局長であられるのであろう? 人が良いだけに勿体無い……」
「あ、あー! すいませんすいません! 今すぐ帰って話し合いします! また船お願いしても良いでしょうか!!」
「む……こちらとしても騒ぎの常連にかまけている時間は不要か。わかった、シロガネ居住区への小舟を出してもらおう」
それまで逃げ出さぬよう、シロガネまで同行致そう。以前の白い坊やの脱走は、真骨が折れた故。
その言葉にアベルは毎回すいません、と謝罪する。だがその手はがっちりと逃げようとしていた龍の腕を掴んで振り解く所か微動だにしなかった。種族差以上に圧倒的に筋力差があったことに呆然としながら龍はなすがまま小舟に乗せられてシロガネ居住区へ逆戻りさせられていった。
*
シロガネ居住区の船着場所か、ハウスの前まで送り届けられすっかり逃げ場の無くなった龍は門の前で仁王立ちするアベルを恨めしげに睨み上げる。どこ吹く風でその視線を受け流すアベルに呻く様な声で恨言を呟いていた。
「なんで……連れ戻したんですか……あれで話に決着ついてたじゃ無いですか……」
「本人の了解も無しでか?」
しかしその恨言をアベルは切って捨てる。う、と呻く。確かに騙し打ちの様に託した自覚はある。だが、それでもあの時アベルは了承したはずだ。それともやはり都合が悪いからもう一度引き取れと言われるのだろうか。
それだけは困ると龍は今度は真っ直ぐアベルを見た。
「今更取り消しはないんじゃ無いんですか? 貴方は確かにナツキを引き取ってくれると請け負ってくれた。その時に特に金品や品物の話はなかったですよね?」
「……」
「ッ、俺と二人で話したのはそう言う証拠はないと言うためですか!? そう言う場所なんですか、ここは!」
「誰がナツキちゃんの話をしたんだ。俺は貴方の話をしたんだ」
冷たい声だった。昨日の穏やかに凪いだ海とは打って変わって、深海の様な暗ささえ感じる声だった。思わず息を呑む龍にアベルはゆっくりと口を開く。
「先程も見てもらっただろう。それは龍殿、貴方の加入同意書だ」
「だ、から……俺は」
「ここに残らないって? 誰が見ても未練がましい顔をしながら言うことじゃあない」
昨日いたうちの組員全員が気付いていたぞ。
その一言に龍はいよいよ何も言えなくなる。確かに羨ましかった。置いていくと決めたのは自分なのに、この場所に残れるナツキの事が。それでも、自分は居る資格なんてないと諦めたのに。なのに目の前の男は諦めさせてくれない。強引に引き込んで、それでこの人達が後悔するような結果になったら? 龍にはそれが恐ろしかった。けれどもアベルは昨日のような聡さを発揮してくれなかった。否、気付いて突き放すように、けれども龍を手放そうとしない。
ふと、何故彼がそこまでやるのかと疑問を抱いた。ナツキの件はともかく、ここに残る残らないは龍の問題なはずだ。よく考えれば、そもそも自分が残らない事情を彼は知らない。
そうか、じゃあちゃんと言えば自分の諦めも受け入れてくれる。そう思った龍は口を開きかけた。
「おお、弟よ! 今戻ったぞ!!」
は、と龍は顔を上げた。聞いていた期間は自分の人生の中では非常に短い。けれども鮮烈に記憶に残る声。アベルと似て、異なる声音。
「うるさいぞ、カイン」
アベルがうんざりした顔でそう言う。辛辣じゃあないか、と大袈裟にジェスチャーして、青い目が龍を捉える。
はつらつとしていた目が、まろい笑みを形作る。
「久しぶりだな龍君。息災か?」
ああ、騙されて無一文になった自分を助けてくれたヒトだ。
感無量に陥り黙り込んだ龍に、カインがぽんぽんと肩を軽く叩く。それすらも懐かしくて、嬉しくて思わず俯いた時だった。
「龍くん?」
三年間、聞いてきた声だ。たった一夜離れただけで懐かしく感じてしまうのは自分にとって宝物の様な記憶の中にいる男が目の前にいるからだろうか。ゆっくり振り返れば勢い良くナツキが飛び込んでくる。危うく後ろに倒れそうになった龍をカインが支えた。
「ほんとうだ」
龍の腹に顔を埋めたナツキがポツリと呟いた。そしてがばりと顔を上げる。昨日俯いていた時の顔はなんだっけ。そう考えてみるも思いだせず、そうだ自分はナツキの顔を見ず離れようとしていたのだと気付いた。
「アベルくんの言う通りだ」
きらきらと黄色い目が、大きく開いた口が、天を向きそうなほど上がった耳が、全身が。
「龍くん、あたらしいおうちに帰ってきた!!」
これ以上ないくらい嬉しいと表していて。それを受け止めて良いのだろうかと手を彷徨わせる龍を、ぽんと両肩に大きな手が乗せられる。アベルもカインも良いのだと、目で訴えていた。
「ただいま、なっちゃん」
「おかえりなさい!」
その一言はみっともなく震えていた。けれども気にしないよ、と彼女の声は彼を出迎えたのだ。
*
「えろう遠回しなやり方やねえ」
突発で開催されたにも関わらず全員が揃った歓迎会。端の席でエールを傾けていたアベルの横に滑り込むように座ったルカはため息まじりにそう言った。まあ、そう言われるよなぁと思いながらも自分の中では最高の結果だと思っているので聞き流す。
「ま、ベル坊時々気持ち悪いくらいヒトん事勘づくさかい、今回もそう言う事やろ? ここまで大立ち回りするんは初めて見たけど」
「……ルカはさ、レイやリコが誰かと別れて寂しがったらどう思う?」
藪から棒なアベルの質問に面くらいながらも、ルカはあいつらそういうタマちゃうわ、と否定する。例えばだよ、と言われればまあその程度の茶番は付き合ってやるかと少し逡巡する。
「……まあ、何とかしてもっぺん会わしたろかとは思うわ」
「だよなぁ」
「なんや気持ち悪い。せやったらなんやの」
「泣いてたんだよ、ナツキちゃん。涙は出てなかったんだが」
アベルが目を細めてある方向を見る。そこには小さな人集りができていた。どうやらノエルが龍にトリプルトライアドをけしかけ連続で負かしていた。ナツキが懸命に龍を応援するもその連敗記録は止まらない。……イカサマしていることに、誰か気付いていないのだろうか? そう思うがチョコボに蹴られるのはごめんなのでアベルは言わない。
そんなアベルを横目で見てルカはパンケーキを一切れ、口に放り込む。
「確かに、結果上々やね」
お疲れさん、マスター。
そう言って労わればアベルは擽ったそうに身を捩って、誤魔化すようにジョッキを煽った。
龍の世話になったアウラ・ゼラのディア一家がカインであること。普段アキやルカの起こす騒ぎのせいで赤誠組にアベルが責任者として顔を覚えられていること。龍が泊まった宿が、クガネの観光地として有名でそこで騒げば誰かしらの目につくこと、その結果龍が身動き取れにくくなること。今回二人の、龍の加入が全てわかった上で行動を起こしたアベルの掌の上だった。その根底が『身内』となったナツキを『他人』になった龍が泣かせたからであると気付いているのは恐らくルカとカインだけだろう。
ほんま恐ろしいでこの凡人。
呑気に酒を継ぎ足すアベルを横目で見ながらふっとルカが笑う。
(まあ、身内にとんと甘いでなぁ。振り切ったこいつは退屈しん)
そしてあの二人は、これから嫌ってほど構われるのだろう。自分も含めて。当面寂しいなど思うことはないんだろう。
今後が少しだけ楽しみになったルカはカルーアミルクで口の中のパンケーキを押し流す。アベルがうわ、と顔を顰めていた。
*
へとへとになった身体を引きずって、龍はハウスの扉を明ける。その瞬間香ばしい匂いが鼻をくすぐった。匂いの方を見るとナツキがエプロンドレス姿で魚料理を持って龍を出迎えていた。
「龍くん! あのねあのね、ベルくんが今日釣りにつれていってくれたの! おしゃかな取れたんだよ! みて! 初めて龍くんが食べさしてくれたおしゃかな! おれが釣ってごはんにしたの!」
こんがりと焼けたレインボートラウトが乗せられた皿を見て、龍が無言でナツキを撫でる。疲れが少し消えた様な気がした。
「ただいま、なっちゃん」
「おかえりなさい、龍くん!」
嬉しいが弾けたような声だった。遠くでディア兄弟が微笑ましげに見ていたのには気づかなかった。
もう、バイバイなんて言うもんか。