小説 2025/01/09 Thu #CoC #うちよそ #明彦飯 続きを読む藤堂明彦と鮫島新名のPM13:01 「やあ、ご相伴にあずかりに来たよ」 「電話しろつったろーが」 のんびりとした声と共に鮫島がひょっこりと顔を出す。こんな辺鄙なところによくもまぁ、と思いながらも自分と同じく色の抜けた髪にどこか安心しながらも明彦は悪態をついた。 彼女と知り合ったのはなんだったか、と考えながら玉ねぎを刻む。確か、ウィリアムにくっついてきたんだったか。先天性白皮症、アルビノ体質自体は明彦の身近に来栖がいたが、彼は明彦ほど白くはない。西洋系のハーフだと言えばそれで通ってしまうほどのものだ。だから、そのときは驚いたもので、自分と同じくらい白い人間がいたのかと凝視してしまった。 あの時の得体の知れない安心感はなんだったんだろうか。 そんな事を考えながら背後で秋に特撮について熱く語っている鮫島の声を聞きながら刻んだ玉ねぎをバターで炒める。今日は晶と朝顔はいないが秋がいるので多少甘くしておかないと玉ねぎだけほじくり返すのである。それは作り手あるまじきだ、と思いつつ飴色になった玉ねぎを冷ましつつ、その時間でマッシュルームを細かく刻んで、人参をミキサーでペースト状にしていく。肉に可能な限り野菜を突っ込んでおかないと、朝顔や晶はともかくとして秋が絶対に食べないのだ。鮫島には付き合わせるようで申し訳ないが犠牲になってもらう。 冷めた飴色玉ねぎとマッシュルームを合挽きのミンチ肉と卵、牛乳、パン粉を練り混ぜる。地味にこの作業が好きで、気を付けないと延々とこねている上に自分の握力の強さを読み違えて混ぜた具材も潰しかねない。やがて小判型に整えて真ん中を凹ませ、熱しておいたフライパンにそっと置いていく。 ジュウ、といかにもな音を立てて焼いていると背後から秋にしがみつかれた鮫島が覗き込んできた。 「おぉ、ハンバーグかい?楽しみだねぇ」 「おー。焼いたら終わりだからもうちょい向こうで秋に遊ばれててくれ」 「おう、まかせろ!さめ!オレが遊んでやるんだからもっとたのしそうにしろよ!」 「遊んであげてるのこっちなんだけどなぁ?」 なんだかなぁ、と言いながらも秋を抱えて鮫島が離れていく。子供は苦手と言ってたっけ?と思いつつ普段連絡もなく飯だけたかりにくるのでそれくらいのことはしてもらわないとこっちも持たない、と三チビの中でも最も暴れん坊の秋を押し付けるあたり明彦も人が悪い。 さて、と蓋をしたフライパンの隣でソースを煮詰めている小鍋の火を見ながら明彦は洗い物に取り掛かった。* できたぞ、と言う言葉に秋より先に鮫島がすっ飛んできた。 「おい・・・秋は・・・」 「さめー!こら!オレをおいてくなバカ!!」 「悪いね、出来立てが逃げるから追いかけて捕まえなきゃと思ったのさ」 「はっ!!なるほどな・・・!?できたて、つかまえたか!?」 「完璧だよ」 「ごくろう!!」 なんの会話だ、と思いながら二人の前にプレートを置いていく。ほわぁ、とそんな間抜けな声を上げたのはどちらだろうか。目の前で湯気が揺らいでいる。 まず、目に付いたのは花形の目玉焼き。赤いケチャップソースがハンバーグを包み込むようにかけられている。白い米に、マグカップには黄金色のオニオンスープが注がれている。そしてレタス・胡瓜・プチトマトの簡単なサラダ。 「お昼から豪勢だねぇ。毎日こんな感じなのかい?」 「普段は夜の間に仕込みだけしてんだよ。アンタが急に来たから予定変更したんだっつーの」 「それはそれは。嬉しい限りだねえ」 「いや褒めてねーよ。イヤミだっつの」 悪態をつく明彦の服の裾を、秋がぐいと強く引っ張る。見てみればまだ食わねえのかと顔面で訴えてきていた。毒気を抜かれた明彦はため息をつきながら席につく。 「いただきます」 「いたっきます!」 「いただきまーす」 挨拶もそこそこに秋と鮫島は勢いよくお互いの目玉焼きに箸を突き立てる。何やってんだ、と思いつつ様式美なので明彦はほっといて黙々と食っていた。 以下、二人の行動である。 箸を固く握ったまま両者、睨み合う(鮫島は普通に見下ろしていただけだが) 「・・・やるな、サメ」 「そっちこそ。けど今日はわたしが早かったよね?」 「は!?オレだろ!?」 「いーや、わたしのが早かった。そうだろうあっきー?」 「あきひこにぃ!!オレ!!オレのが早かった!!」 「知らねえよ、ドローにしとけ」 「「やだー!!」」 箸を握ったまま二人揃って明彦に食ってかかる。当の明彦は酷くめんどくさそうに咀嚼していた。ごくんと飲み込んで箸を一旦置き、すっと手を出す。 それを見た二人も箸から手を離した。そして。 「「「じゃんけんポン!!!!!」」」 勢いよく手を降り出す。明彦がグー、秋と鮫島両名はチョキ。明彦の一人勝ちだ。 「くっ、まけた・・・」 「あきひこにぃジャンケンつよすぎー!!」 「俺が強いんじゃねえよ、お前らがジャンケン弱すぎんだ」 「あ、少しイキったね。しゅーちん、今この人イキったよ」 「イキった!あきひこにぃのイキりむしー!」 勝ったのに散々な言われようの明彦は、しかしこれも鮫島が来たときのいつものことだったからはいはいと受け流した。 大人所帯でいつもの食事は秋も含めて皆行儀よく食べている。しかし、たまにはこういう風に大騒ぎしながら食べる食事も悪くなく、何より普段お兄ちゃんぶってしかめっ面をしている秋が楽しそうだから、明彦は勝手に来る鮫島を強く拒むことはしなかった。 少し冷えたハンバーグは、ちょっとだけ人参の味がした。畳む
藤堂明彦と鮫島新名のPM13:01
「やあ、ご相伴にあずかりに来たよ」
「電話しろつったろーが」
のんびりとした声と共に鮫島がひょっこりと顔を出す。こんな辺鄙なところによくもまぁ、と思いながらも自分と同じく色の抜けた髪にどこか安心しながらも明彦は悪態をついた。
彼女と知り合ったのはなんだったか、と考えながら玉ねぎを刻む。確か、ウィリアムにくっついてきたんだったか。先天性白皮症、アルビノ体質自体は明彦の身近に来栖がいたが、彼は明彦ほど白くはない。西洋系のハーフだと言えばそれで通ってしまうほどのものだ。だから、そのときは驚いたもので、自分と同じくらい白い人間がいたのかと凝視してしまった。
あの時の得体の知れない安心感はなんだったんだろうか。
そんな事を考えながら背後で秋に特撮について熱く語っている鮫島の声を聞きながら刻んだ玉ねぎをバターで炒める。今日は晶と朝顔はいないが秋がいるので多少甘くしておかないと玉ねぎだけほじくり返すのである。それは作り手あるまじきだ、と思いつつ飴色になった玉ねぎを冷ましつつ、その時間でマッシュルームを細かく刻んで、人参をミキサーでペースト状にしていく。肉に可能な限り野菜を突っ込んでおかないと、朝顔や晶はともかくとして秋が絶対に食べないのだ。鮫島には付き合わせるようで申し訳ないが犠牲になってもらう。
冷めた飴色玉ねぎとマッシュルームを合挽きのミンチ肉と卵、牛乳、パン粉を練り混ぜる。地味にこの作業が好きで、気を付けないと延々とこねている上に自分の握力の強さを読み違えて混ぜた具材も潰しかねない。やがて小判型に整えて真ん中を凹ませ、熱しておいたフライパンにそっと置いていく。
ジュウ、といかにもな音を立てて焼いていると背後から秋にしがみつかれた鮫島が覗き込んできた。
「おぉ、ハンバーグかい?楽しみだねぇ」
「おー。焼いたら終わりだからもうちょい向こうで秋に遊ばれててくれ」
「おう、まかせろ!さめ!オレが遊んでやるんだからもっとたのしそうにしろよ!」
「遊んであげてるのこっちなんだけどなぁ?」
なんだかなぁ、と言いながらも秋を抱えて鮫島が離れていく。子供は苦手と言ってたっけ?と思いつつ普段連絡もなく飯だけたかりにくるのでそれくらいのことはしてもらわないとこっちも持たない、と三チビの中でも最も暴れん坊の秋を押し付けるあたり明彦も人が悪い。
さて、と蓋をしたフライパンの隣でソースを煮詰めている小鍋の火を見ながら明彦は洗い物に取り掛かった。
*
できたぞ、と言う言葉に秋より先に鮫島がすっ飛んできた。
「おい・・・秋は・・・」
「さめー!こら!オレをおいてくなバカ!!」
「悪いね、出来立てが逃げるから追いかけて捕まえなきゃと思ったのさ」
「はっ!!なるほどな・・・!?できたて、つかまえたか!?」
「完璧だよ」
「ごくろう!!」
なんの会話だ、と思いながら二人の前にプレートを置いていく。ほわぁ、とそんな間抜けな声を上げたのはどちらだろうか。目の前で湯気が揺らいでいる。
まず、目に付いたのは花形の目玉焼き。赤いケチャップソースがハンバーグを包み込むようにかけられている。白い米に、マグカップには黄金色のオニオンスープが注がれている。そしてレタス・胡瓜・プチトマトの簡単なサラダ。
「お昼から豪勢だねぇ。毎日こんな感じなのかい?」
「普段は夜の間に仕込みだけしてんだよ。アンタが急に来たから予定変更したんだっつーの」
「それはそれは。嬉しい限りだねえ」
「いや褒めてねーよ。イヤミだっつの」
悪態をつく明彦の服の裾を、秋がぐいと強く引っ張る。見てみればまだ食わねえのかと顔面で訴えてきていた。毒気を抜かれた明彦はため息をつきながら席につく。
「いただきます」
「いたっきます!」
「いただきまーす」
挨拶もそこそこに秋と鮫島は勢いよくお互いの目玉焼きに箸を突き立てる。何やってんだ、と思いつつ様式美なので明彦はほっといて黙々と食っていた。
以下、二人の行動である。
箸を固く握ったまま両者、睨み合う(鮫島は普通に見下ろしていただけだが)
「・・・やるな、サメ」
「そっちこそ。けど今日はわたしが早かったよね?」
「は!?オレだろ!?」
「いーや、わたしのが早かった。そうだろうあっきー?」
「あきひこにぃ!!オレ!!オレのが早かった!!」
「知らねえよ、ドローにしとけ」
「「やだー!!」」
箸を握ったまま二人揃って明彦に食ってかかる。当の明彦は酷くめんどくさそうに咀嚼していた。ごくんと飲み込んで箸を一旦置き、すっと手を出す。
それを見た二人も箸から手を離した。そして。
「「「じゃんけんポン!!!!!」」」
勢いよく手を降り出す。明彦がグー、秋と鮫島両名はチョキ。明彦の一人勝ちだ。
「くっ、まけた・・・」
「あきひこにぃジャンケンつよすぎー!!」
「俺が強いんじゃねえよ、お前らがジャンケン弱すぎんだ」
「あ、少しイキったね。しゅーちん、今この人イキったよ」
「イキった!あきひこにぃのイキりむしー!」
勝ったのに散々な言われようの明彦は、しかしこれも鮫島が来たときのいつものことだったからはいはいと受け流した。
大人所帯でいつもの食事は秋も含めて皆行儀よく食べている。しかし、たまにはこういう風に大騒ぎしながら食べる食事も悪くなく、何より普段お兄ちゃんぶってしかめっ面をしている秋が楽しそうだから、明彦は勝手に来る鮫島を強く拒むことはしなかった。
少し冷えたハンバーグは、ちょっとだけ人参の味がした。畳む