小説 2025/01/09 Thu #CoC #うちよそ #明彦飯 続きを読む藤堂明彦と射守屋衣慧のPM19:57 明彦はどきまぎしながらそのマンションの一室のチャイムを鳴らす。以前驚かせようと無言で場所を(職権乱用し)調べアポ無しで突入したところ笑いながら説教させたのを思い出す。今回は事前連絡をしたから大丈夫だ、と思っているとはーいと明るい声がドア越しに聞こえて、がちゃと開かれ招かれる。 「待っとったで、アキ!」 満面の笑みを浮かべながらドアを支える衣慧を見て、思わず明彦も笑った。 関西圏のとある集会、明彦はそれに参加するために衣慧を訪ねた。何の集会かというとサバイバルゲーム、所謂サバゲーの定例集会だ。月に何度か、店舗ごとに集会を開き初心者・玄人問わず一緒にサバゲーを楽しめるイベントである。衣慧の知り合いの店舗の集会が近かった、というのもあり参加に漕ぎ着けたのだ。 サバゲー初心者です、といったフル装備の明彦をうんうんと満足げに見ながら衣慧がバンバンと背中を叩く。 「似合っとるやん!ヘルメットはなんやおもろいことになっとるけど!」 「・・・ブカブカする」 「まあ一回目やからなぁ、怪我せえへんようにかぶっとき!慣れてきたら帽子とかに変えたらええし!」 もぞ、とヘルメットを動かす明彦を微笑ましく見ながら、集合をかける声が耳に届いた衣慧はぐいと明彦をひっぱる。 「ほらアキ!初陣やで!頑張っといで!」 「お、おう!」 上擦った声で返事をして走っていった明彦の背中に行ってらっしゃい!と衣慧は手を振った。 集会が終わり、店舗から二人が撤収したのは日も大分と傾きかけた夕方頃だった。いろんなチームに混ぜてもらいながら3ゲームたっぷり遊んだ明彦はえらくご機嫌で、また疲れた様子を見せない彼に衣慧が感心したように声をかける。 「アキ、ほんま体力あるんやなぁ!というか、初めてするサバゲであそこまで動けへんで普通!」 衣慧の脳裏には単身で敵陣へ突っ込んでいく明彦の姿がリプレイされている。初心者特有の先走って突っ込んでいく傾向だな、と誰もが微笑ましく笑っていた所自分に向けられた銃口を察知して物陰へ隠れたり、スナイパーの位置を見つけたと味方に伝えた後前衛へ繰り出し三人キルを取ったのだ。敵も味方も驚かせながら明彦自身も楽しそうに撃ったり撃たれたり。帰り間際等は玄人たちに囲まれ肩や背中を叩かれながら目を白黒させていた明彦が面白かった。 本人よりも興奮しているかもしれない衣慧に、明彦は引きつった笑みを浮かべるしかない。まさか仕事でよく似たことをしています、とは言えないためだ。口は災いのもとである。無難に運動好きだから、と答えて無理やり話題を変換した。 「と、所でさ。いささん腹減ってね?」 「ん?あー、そいやあ観戦しとって興奮して昼飯食うの忘れとったから腹減ったなぁ。どっか寄ろか?」 「じゃあ、パン屋」 「ほえ?」 思っていた所と違う場所をきいて衣慧がきょとんとする。明彦はおずおずと自分を指さした。 「俺、作るよ。泊めてもらうし」 悪いわ、と断る衣慧に実は準備してきたと言えば観念したように苦笑してじゃあ、と任せてもらった明彦はパン屋に立ち寄りバケットを二本購入した。何がでるんやろか、と明彦を見る衣慧の目は興味津々に輝いていて、絶対うまいの作ろうと決心する。 さて衣慧の部屋に戻ってきた明彦は冷蔵庫に入れさせてもらっていたジップロックを取り出す。 「アキ、これなんや?サバ?」 「うん。塩ヨーグルトで付けてある」 「ヨーグルト!?すごい珍しい組み合わせやな・・・!」 「安心しろよ、ゲテモノじゃねえから」 そう言って笑って、ふと明彦は衣慧がどことなくそわそわしているのに気がついた。 「・・・どした?まじでゲテモノじゃないぞ?」 「あー、そうやなくてな?自分ちでなんもせんの落ち着かんくて」 「じゃあ、これ。三等分に切ってから真ん中で半分に切ってマーガリン塗って焼いといてくれ」 そう言いながら二本のバケットを衣慧に渡せば気使わせてごめんなぁ、と苦笑しながらも取り掛かってくれる。一人暮らしだけあって手際がいいなぁ、と思いながらフライパンにオーブンシートを敷き、皮の面から焼いていく。しばらくして皮の面に綺麗な焼きいろが着いたのを確認して裏返し蓋をする。火を弱めて蒸し焼きにしている相田にトマトと赤玉ねぎ、レモンを輪切りにする。 「アキー、パン焼けたで!」 「あんがと、じゃあレタスちぎってくれね?挟める感じで」 「任せとき!」 ふんす、と得意げに鼻を鳴らしながら返事をする衣慧を心強く思いながら明彦は小ぶりのじゃがいもを皮ごとくし切りにし小鍋で揚げ焼きし、パセリと塩を塗す。 丁度蒸しあがった鯖の小骨を取り除き、衣慧が用意してくれたバケットにレタスやトマト等野菜と一緒に挟んでいく。 最後に塩コショウで味を整えてテーブルへ並べた。 「お待たせ」 「おおお・・・!途中からハンバーガーかな思うてたんやけど魚って珍しいなぁ!」 「サバサンド、って言うらしいぞ。秋奈さんから教えてもらった」 「・・・サバゲーやから?」 「・・・わりぃか」 「ほんまに!?っふふ、洒落効いとるやん!」 不貞腐れた明彦の頭を乱暴になでてて、さてさてと衣慧が両手を合わせる。 「いただきます!」 「おう」 ハツラツとした声で食前の挨拶をして、衣慧は大きな口でかぶりつく。最初見たときはどうなるのか想像もつかなかった塩ヨーグルトに付けられた鯖は生臭さは一切なくふっくらと仕上がっている。かりっと焼かれた皮にトマトとレモンの違う酸味が味を引き締める。少し焼いたバケットの香ばしさと甘さもマッチしている。 「いささん、これ」 「おん?マスタード?」 明彦が渡した容器に入れられたマスタードソースを言われるままちょっと付けてかぶりつく。ぴり、とした辛味が先ほどとは違う旨さを舌に訴えて来た。 「うっわ味変わったわ!アキすごない!?サバはふわふわやし臭ないし!ポテトも塩加減ばっちりやで!」 「そっか、よかった」 そう言ってへにゃりと明彦が笑う。うまいうまいと咀嚼する衣慧にホッとした。 「そいやあ明日には帰るんやな?」 後片付けを二人でしながら衣慧は明彦を見上げながら聞いてきた。うん、と答えると残念やわぁ、と本当に残念そうに言われて少し名残惜しくなる。なんとなく、明彦は思っていたことを口に出した。 「また、一緒に遊ばね?今日はいささんゲーム出てなかったし、一緒のチームで」 「! ええよ!今度はボクがそっち行くわ!」 「待ってる。あ、後でおすすめの武器教えてくれよ。ハルさん達・・・向こうの友達にも布教しとくからさ」 そんな他愛ない話をしながら、次の約束をしたのだ。畳む
藤堂明彦と射守屋衣慧のPM19:57
明彦はどきまぎしながらそのマンションの一室のチャイムを鳴らす。以前驚かせようと無言で場所を(職権乱用し)調べアポ無しで突入したところ笑いながら説教させたのを思い出す。今回は事前連絡をしたから大丈夫だ、と思っているとはーいと明るい声がドア越しに聞こえて、がちゃと開かれ招かれる。
「待っとったで、アキ!」
満面の笑みを浮かべながらドアを支える衣慧を見て、思わず明彦も笑った。
関西圏のとある集会、明彦はそれに参加するために衣慧を訪ねた。何の集会かというとサバイバルゲーム、所謂サバゲーの定例集会だ。月に何度か、店舗ごとに集会を開き初心者・玄人問わず一緒にサバゲーを楽しめるイベントである。衣慧の知り合いの店舗の集会が近かった、というのもあり参加に漕ぎ着けたのだ。
サバゲー初心者です、といったフル装備の明彦をうんうんと満足げに見ながら衣慧がバンバンと背中を叩く。
「似合っとるやん!ヘルメットはなんやおもろいことになっとるけど!」
「・・・ブカブカする」
「まあ一回目やからなぁ、怪我せえへんようにかぶっとき!慣れてきたら帽子とかに変えたらええし!」
もぞ、とヘルメットを動かす明彦を微笑ましく見ながら、集合をかける声が耳に届いた衣慧はぐいと明彦をひっぱる。
「ほらアキ!初陣やで!頑張っといで!」
「お、おう!」
上擦った声で返事をして走っていった明彦の背中に行ってらっしゃい!と衣慧は手を振った。
集会が終わり、店舗から二人が撤収したのは日も大分と傾きかけた夕方頃だった。いろんなチームに混ぜてもらいながら3ゲームたっぷり遊んだ明彦はえらくご機嫌で、また疲れた様子を見せない彼に衣慧が感心したように声をかける。
「アキ、ほんま体力あるんやなぁ!というか、初めてするサバゲであそこまで動けへんで普通!」
衣慧の脳裏には単身で敵陣へ突っ込んでいく明彦の姿がリプレイされている。初心者特有の先走って突っ込んでいく傾向だな、と誰もが微笑ましく笑っていた所自分に向けられた銃口を察知して物陰へ隠れたり、スナイパーの位置を見つけたと味方に伝えた後前衛へ繰り出し三人キルを取ったのだ。敵も味方も驚かせながら明彦自身も楽しそうに撃ったり撃たれたり。帰り間際等は玄人たちに囲まれ肩や背中を叩かれながら目を白黒させていた明彦が面白かった。
本人よりも興奮しているかもしれない衣慧に、明彦は引きつった笑みを浮かべるしかない。まさか仕事でよく似たことをしています、とは言えないためだ。口は災いのもとである。無難に運動好きだから、と答えて無理やり話題を変換した。
「と、所でさ。いささん腹減ってね?」
「ん?あー、そいやあ観戦しとって興奮して昼飯食うの忘れとったから腹減ったなぁ。どっか寄ろか?」
「じゃあ、パン屋」
「ほえ?」
思っていた所と違う場所をきいて衣慧がきょとんとする。明彦はおずおずと自分を指さした。
「俺、作るよ。泊めてもらうし」
悪いわ、と断る衣慧に実は準備してきたと言えば観念したように苦笑してじゃあ、と任せてもらった明彦はパン屋に立ち寄りバケットを二本購入した。何がでるんやろか、と明彦を見る衣慧の目は興味津々に輝いていて、絶対うまいの作ろうと決心する。
さて衣慧の部屋に戻ってきた明彦は冷蔵庫に入れさせてもらっていたジップロックを取り出す。
「アキ、これなんや?サバ?」
「うん。塩ヨーグルトで付けてある」
「ヨーグルト!?すごい珍しい組み合わせやな・・・!」
「安心しろよ、ゲテモノじゃねえから」
そう言って笑って、ふと明彦は衣慧がどことなくそわそわしているのに気がついた。
「・・・どした?まじでゲテモノじゃないぞ?」
「あー、そうやなくてな?自分ちでなんもせんの落ち着かんくて」
「じゃあ、これ。三等分に切ってから真ん中で半分に切ってマーガリン塗って焼いといてくれ」
そう言いながら二本のバケットを衣慧に渡せば気使わせてごめんなぁ、と苦笑しながらも取り掛かってくれる。一人暮らしだけあって手際がいいなぁ、と思いながらフライパンにオーブンシートを敷き、皮の面から焼いていく。しばらくして皮の面に綺麗な焼きいろが着いたのを確認して裏返し蓋をする。火を弱めて蒸し焼きにしている相田にトマトと赤玉ねぎ、レモンを輪切りにする。
「アキー、パン焼けたで!」
「あんがと、じゃあレタスちぎってくれね?挟める感じで」
「任せとき!」
ふんす、と得意げに鼻を鳴らしながら返事をする衣慧を心強く思いながら明彦は小ぶりのじゃがいもを皮ごとくし切りにし小鍋で揚げ焼きし、パセリと塩を塗す。
丁度蒸しあがった鯖の小骨を取り除き、衣慧が用意してくれたバケットにレタスやトマト等野菜と一緒に挟んでいく。
最後に塩コショウで味を整えてテーブルへ並べた。
「お待たせ」
「おおお・・・!途中からハンバーガーかな思うてたんやけど魚って珍しいなぁ!」
「サバサンド、って言うらしいぞ。秋奈さんから教えてもらった」
「・・・サバゲーやから?」
「・・・わりぃか」
「ほんまに!?っふふ、洒落効いとるやん!」
不貞腐れた明彦の頭を乱暴になでてて、さてさてと衣慧が両手を合わせる。
「いただきます!」
「おう」
ハツラツとした声で食前の挨拶をして、衣慧は大きな口でかぶりつく。最初見たときはどうなるのか想像もつかなかった塩ヨーグルトに付けられた鯖は生臭さは一切なくふっくらと仕上がっている。かりっと焼かれた皮にトマトとレモンの違う酸味が味を引き締める。少し焼いたバケットの香ばしさと甘さもマッチしている。
「いささん、これ」
「おん?マスタード?」
明彦が渡した容器に入れられたマスタードソースを言われるままちょっと付けてかぶりつく。ぴり、とした辛味が先ほどとは違う旨さを舌に訴えて来た。
「うっわ味変わったわ!アキすごない!?サバはふわふわやし臭ないし!ポテトも塩加減ばっちりやで!」
「そっか、よかった」
そう言ってへにゃりと明彦が笑う。うまいうまいと咀嚼する衣慧にホッとした。
「そいやあ明日には帰るんやな?」
後片付けを二人でしながら衣慧は明彦を見上げながら聞いてきた。うん、と答えると残念やわぁ、と本当に残念そうに言われて少し名残惜しくなる。なんとなく、明彦は思っていたことを口に出した。
「また、一緒に遊ばね?今日はいささんゲーム出てなかったし、一緒のチームで」
「! ええよ!今度はボクがそっち行くわ!」
「待ってる。あ、後でおすすめの武器教えてくれよ。ハルさん達・・・向こうの友達にも布教しとくからさ」
そんな他愛ない話をしながら、次の約束をしたのだ。畳む