基本うちよそ、自キャラの話。時系列は順不同。TRPGシナリオ・FF14メインストーリーのネタバレがある作品があります。記載しているのでご注意ください。R18タグの作品のパスワードは関連CPのどちらかの身長で開きます。
TRPGのPCじゃない、診断やら話の流れで生まれたやつら。基本現代日本。現代組とでも銘打っておく。
佐辺雫月の話
#現代組
既に凍えて死んでいた
「佐辺ー今日って暇か?」
「残念、バイトでーす。また誘ってー」
級友に片手を上げて軽く返した雫月はスマホ端末に記載された日時を視界に入れてため息を付いた。ほんの少しの哀愁を苛立ちの中に混ぜ込んで飲み込む。
十二月二十四日。世間ではクリスマスムード一色だ。その中を一人バイト先へ足を進めることにもう何も思わなくなった。ただイルミネーションが目障りだった。
佐辺雫月はクリスマスを筆頭に、カレンダーに記載されている行事が軒並み嫌いだった。人といるのが嫌いなわけではない。むしろ好きだ。しかしイベントが嫌いだった。
昔は人並みに心が躍っていた気がする。父と母と、三人で過ごす日だとずっとずっと楽しみにしていた。正直な話、サンタクロースという存在を信じていたわけではない。いないものだと割り切った上で両親と過ごせる時間が好きだった。翌朝置かれているプレゼントよりも、自分がプレゼントを抱えて笑ってくれる二人を見れるのが大好きで嬉しかった。
事故だった。居眠り運転で信号を無視し突っ込んできたトラックが、二人が乗っていた車に衝突した、と言うことを知ったのは雫月が高校に上がって暫くした頃だった。即死だったらしい。当時患っていた祖父母では雫月を引き取ることができず父方の兄夫婦のところへ引き取られることになった。
二人が雫月の前から消えたのは奇しくも彼が小学校二年生の、クリスマスだった。
叔父は家にいることが少なかったものの、自分の兄弟の子どもということで気にかけてくれていたとは思う。しかしその妻が雫月を邪険に扱った。自分の子をあからさまに贔屓し、事あるごとに優劣をけては貶す。両親の遺産にこそ手を出さなかったものの、そこから雫月の学費と生活費を出す。授業参観は当然来ないし、運動会は離れたところで一人でコンビニ弁当を食べていた。それだけではなく、毎日の食事も出たことはない。叔父がいるときは大体外食だったし、そこから出た雫月の分だけ遺産から引いていたのを知ったのは家を出る直前だった気がする。
幼心なりに、雫月もこの人の子供じゃないからと理解していた。だからその年から自分の一年の中に誕生日も正月も、クリスマスだって無くなって当たり前だと思っていた。違うとこの子供なんだから好きになってもらえなくて当然だと、必死で思い込んでいたような気がする。
完全に決別したのは高校二年の冬だった。きっかけは雫月があまり喋らなかった(というよりは避けられていた)叔母に両親の死因を聞いた時だった。
「義兄さんも義姉さんもぐっちゃぐちゃで汚かったわよ。あんたのクリスマスプレゼントでも買いに行ってそうなったんじゃない?車に壊れた玩具が乗ってたらしいし。あっやだ、これあんたがいたせいで死んでない?」
あんたがいなきゃ、二人共生きてたかもねえと嘲笑する叔母を、雫月は感情に任せて暴力を振るうことも言い返すこともしなかった。ただ、ありがとうございました。その一言だけ言ってすぐに離れた。叔母は気味悪がっていた。
感情が停滞する。そんなことがあるのかと雫月はどこか他人事のように関心していた。本当なら、それこそこれまでの不満ごとあの女にぶつけても良かったはずなのにそれすらする気力がなかった。一瞬たりとも自分はこの人たちの家族になれていなかった事実と、叔母の話した事実が雫月にほんの少し残った希望も砕いて行く。
「俺の、せいか」
凪いだ心でただ、それだけを呟いた。
そこからは早かった。県外の大学を奨学金で進学し、高校の間ひたすらバイトを掛け持ちした。あの家にはほとんど寄り付かなかった。年齢をごまかして夜中まで働いて今後の貯蓄を蓄える。世間に出てから必要なことを勉強の合間に頭に叩き込む。その頃になると雫月はクラスメイトと遊ぶこともほとんどなくなっていた。必要最低限の物だけ残して全て売り払い、遺産に関しては叔父に相談し世話になった分と少ないながらも半分はあの家に送ることにした。そして一言「これまでお世話になりました」と言って雫月はあの家を出た。返事はなかった。
悴む両手を無造作にポケットに突っ込んで、雫月は次のバイト先へと足を進める。別に金には困っていない。ただこの日持て余してしまう時間に困る。友人たちも大抵イベントで盛り上がっているのだろうが、もうその輪に入りたいとは思えなくなっていた。
どうせ明日は休講だし、ぶっ倒れるまで働いておこう。昔を思い出して凍えてしまわないように。
鮮やかなイルミネーションを睨みつけながら、雫月は次の仕事の内容を無機質に繰り返し思い出していた。畳む
佐辺雫月の話
#現代組
既に凍えて死んでいた
「佐辺ー今日って暇か?」
「残念、バイトでーす。また誘ってー」
級友に片手を上げて軽く返した雫月はスマホ端末に記載された日時を視界に入れてため息を付いた。ほんの少しの哀愁を苛立ちの中に混ぜ込んで飲み込む。
十二月二十四日。世間ではクリスマスムード一色だ。その中を一人バイト先へ足を進めることにもう何も思わなくなった。ただイルミネーションが目障りだった。
佐辺雫月はクリスマスを筆頭に、カレンダーに記載されている行事が軒並み嫌いだった。人といるのが嫌いなわけではない。むしろ好きだ。しかしイベントが嫌いだった。
昔は人並みに心が躍っていた気がする。父と母と、三人で過ごす日だとずっとずっと楽しみにしていた。正直な話、サンタクロースという存在を信じていたわけではない。いないものだと割り切った上で両親と過ごせる時間が好きだった。翌朝置かれているプレゼントよりも、自分がプレゼントを抱えて笑ってくれる二人を見れるのが大好きで嬉しかった。
事故だった。居眠り運転で信号を無視し突っ込んできたトラックが、二人が乗っていた車に衝突した、と言うことを知ったのは雫月が高校に上がって暫くした頃だった。即死だったらしい。当時患っていた祖父母では雫月を引き取ることができず父方の兄夫婦のところへ引き取られることになった。
二人が雫月の前から消えたのは奇しくも彼が小学校二年生の、クリスマスだった。
叔父は家にいることが少なかったものの、自分の兄弟の子どもということで気にかけてくれていたとは思う。しかしその妻が雫月を邪険に扱った。自分の子をあからさまに贔屓し、事あるごとに優劣をけては貶す。両親の遺産にこそ手を出さなかったものの、そこから雫月の学費と生活費を出す。授業参観は当然来ないし、運動会は離れたところで一人でコンビニ弁当を食べていた。それだけではなく、毎日の食事も出たことはない。叔父がいるときは大体外食だったし、そこから出た雫月の分だけ遺産から引いていたのを知ったのは家を出る直前だった気がする。
幼心なりに、雫月もこの人の子供じゃないからと理解していた。だからその年から自分の一年の中に誕生日も正月も、クリスマスだって無くなって当たり前だと思っていた。違うとこの子供なんだから好きになってもらえなくて当然だと、必死で思い込んでいたような気がする。
完全に決別したのは高校二年の冬だった。きっかけは雫月があまり喋らなかった(というよりは避けられていた)叔母に両親の死因を聞いた時だった。
「義兄さんも義姉さんもぐっちゃぐちゃで汚かったわよ。あんたのクリスマスプレゼントでも買いに行ってそうなったんじゃない?車に壊れた玩具が乗ってたらしいし。あっやだ、これあんたがいたせいで死んでない?」
あんたがいなきゃ、二人共生きてたかもねえと嘲笑する叔母を、雫月は感情に任せて暴力を振るうことも言い返すこともしなかった。ただ、ありがとうございました。その一言だけ言ってすぐに離れた。叔母は気味悪がっていた。
感情が停滞する。そんなことがあるのかと雫月はどこか他人事のように関心していた。本当なら、それこそこれまでの不満ごとあの女にぶつけても良かったはずなのにそれすらする気力がなかった。一瞬たりとも自分はこの人たちの家族になれていなかった事実と、叔母の話した事実が雫月にほんの少し残った希望も砕いて行く。
「俺の、せいか」
凪いだ心でただ、それだけを呟いた。
そこからは早かった。県外の大学を奨学金で進学し、高校の間ひたすらバイトを掛け持ちした。あの家にはほとんど寄り付かなかった。年齢をごまかして夜中まで働いて今後の貯蓄を蓄える。世間に出てから必要なことを勉強の合間に頭に叩き込む。その頃になると雫月はクラスメイトと遊ぶこともほとんどなくなっていた。必要最低限の物だけ残して全て売り払い、遺産に関しては叔父に相談し世話になった分と少ないながらも半分はあの家に送ることにした。そして一言「これまでお世話になりました」と言って雫月はあの家を出た。返事はなかった。
悴む両手を無造作にポケットに突っ込んで、雫月は次のバイト先へと足を進める。別に金には困っていない。ただこの日持て余してしまう時間に困る。友人たちも大抵イベントで盛り上がっているのだろうが、もうその輪に入りたいとは思えなくなっていた。
どうせ明日は休講だし、ぶっ倒れるまで働いておこう。昔を思い出して凍えてしまわないように。
鮮やかなイルミネーションを睨みつけながら、雫月は次の仕事の内容を無機質に繰り返し思い出していた。畳む
#CoC #うちよそ #明彦飯
藤堂明彦と鮫島新名のPM13:01
「やあ、ご相伴にあずかりに来たよ」
「電話しろつったろーが」
のんびりとした声と共に鮫島がひょっこりと顔を出す。こんな辺鄙なところによくもまぁ、と思いながらも自分と同じく色の抜けた髪にどこか安心しながらも明彦は悪態をついた。
彼女と知り合ったのはなんだったか、と考えながら玉ねぎを刻む。確か、ウィリアムにくっついてきたんだったか。先天性白皮症、アルビノ体質自体は明彦の身近に来栖がいたが、彼は明彦ほど白くはない。西洋系のハーフだと言えばそれで通ってしまうほどのものだ。だから、そのときは驚いたもので、自分と同じくらい白い人間がいたのかと凝視してしまった。
あの時の得体の知れない安心感はなんだったんだろうか。
そんな事を考えながら背後で秋に特撮について熱く語っている鮫島の声を聞きながら刻んだ玉ねぎをバターで炒める。今日は晶と朝顔はいないが秋がいるので多少甘くしておかないと玉ねぎだけほじくり返すのである。それは作り手あるまじきだ、と思いつつ飴色になった玉ねぎを冷ましつつ、その時間でマッシュルームを細かく刻んで、人参をミキサーでペースト状にしていく。肉に可能な限り野菜を突っ込んでおかないと、朝顔や晶はともかくとして秋が絶対に食べないのだ。鮫島には付き合わせるようで申し訳ないが犠牲になってもらう。
冷めた飴色玉ねぎとマッシュルームを合挽きのミンチ肉と卵、牛乳、パン粉を練り混ぜる。地味にこの作業が好きで、気を付けないと延々とこねている上に自分の握力の強さを読み違えて混ぜた具材も潰しかねない。やがて小判型に整えて真ん中を凹ませ、熱しておいたフライパンにそっと置いていく。
ジュウ、といかにもな音を立てて焼いていると背後から秋にしがみつかれた鮫島が覗き込んできた。
「おぉ、ハンバーグかい?楽しみだねぇ」
「おー。焼いたら終わりだからもうちょい向こうで秋に遊ばれててくれ」
「おう、まかせろ!さめ!オレが遊んでやるんだからもっとたのしそうにしろよ!」
「遊んであげてるのこっちなんだけどなぁ?」
なんだかなぁ、と言いながらも秋を抱えて鮫島が離れていく。子供は苦手と言ってたっけ?と思いつつ普段連絡もなく飯だけたかりにくるのでそれくらいのことはしてもらわないとこっちも持たない、と三チビの中でも最も暴れん坊の秋を押し付けるあたり明彦も人が悪い。
さて、と蓋をしたフライパンの隣でソースを煮詰めている小鍋の火を見ながら明彦は洗い物に取り掛かった。
*
できたぞ、と言う言葉に秋より先に鮫島がすっ飛んできた。
「おい・・・秋は・・・」
「さめー!こら!オレをおいてくなバカ!!」
「悪いね、出来立てが逃げるから追いかけて捕まえなきゃと思ったのさ」
「はっ!!なるほどな・・・!?できたて、つかまえたか!?」
「完璧だよ」
「ごくろう!!」
なんの会話だ、と思いながら二人の前にプレートを置いていく。ほわぁ、とそんな間抜けな声を上げたのはどちらだろうか。目の前で湯気が揺らいでいる。
まず、目に付いたのは花形の目玉焼き。赤いケチャップソースがハンバーグを包み込むようにかけられている。白い米に、マグカップには黄金色のオニオンスープが注がれている。そしてレタス・胡瓜・プチトマトの簡単なサラダ。
「お昼から豪勢だねぇ。毎日こんな感じなのかい?」
「普段は夜の間に仕込みだけしてんだよ。アンタが急に来たから予定変更したんだっつーの」
「それはそれは。嬉しい限りだねえ」
「いや褒めてねーよ。イヤミだっつの」
悪態をつく明彦の服の裾を、秋がぐいと強く引っ張る。見てみればまだ食わねえのかと顔面で訴えてきていた。毒気を抜かれた明彦はため息をつきながら席につく。
「いただきます」
「いたっきます!」
「いただきまーす」
挨拶もそこそこに秋と鮫島は勢いよくお互いの目玉焼きに箸を突き立てる。何やってんだ、と思いつつ様式美なので明彦はほっといて黙々と食っていた。
以下、二人の行動である。
箸を固く握ったまま両者、睨み合う(鮫島は普通に見下ろしていただけだが)
「・・・やるな、サメ」
「そっちこそ。けど今日はわたしが早かったよね?」
「は!?オレだろ!?」
「いーや、わたしのが早かった。そうだろうあっきー?」
「あきひこにぃ!!オレ!!オレのが早かった!!」
「知らねえよ、ドローにしとけ」
「「やだー!!」」
箸を握ったまま二人揃って明彦に食ってかかる。当の明彦は酷くめんどくさそうに咀嚼していた。ごくんと飲み込んで箸を一旦置き、すっと手を出す。
それを見た二人も箸から手を離した。そして。
「「「じゃんけんポン!!!!!」」」
勢いよく手を降り出す。明彦がグー、秋と鮫島両名はチョキ。明彦の一人勝ちだ。
「くっ、まけた・・・」
「あきひこにぃジャンケンつよすぎー!!」
「俺が強いんじゃねえよ、お前らがジャンケン弱すぎんだ」
「あ、少しイキったね。しゅーちん、今この人イキったよ」
「イキった!あきひこにぃのイキりむしー!」
勝ったのに散々な言われようの明彦は、しかしこれも鮫島が来たときのいつものことだったからはいはいと受け流した。
大人所帯でいつもの食事は秋も含めて皆行儀よく食べている。しかし、たまにはこういう風に大騒ぎしながら食べる食事も悪くなく、何より普段お兄ちゃんぶってしかめっ面をしている秋が楽しそうだから、明彦は勝手に来る鮫島を強く拒むことはしなかった。
少し冷えたハンバーグは、ちょっとだけ人参の味がした。畳む
藤堂明彦と鮫島新名のPM13:01
「やあ、ご相伴にあずかりに来たよ」
「電話しろつったろーが」
のんびりとした声と共に鮫島がひょっこりと顔を出す。こんな辺鄙なところによくもまぁ、と思いながらも自分と同じく色の抜けた髪にどこか安心しながらも明彦は悪態をついた。
彼女と知り合ったのはなんだったか、と考えながら玉ねぎを刻む。確か、ウィリアムにくっついてきたんだったか。先天性白皮症、アルビノ体質自体は明彦の身近に来栖がいたが、彼は明彦ほど白くはない。西洋系のハーフだと言えばそれで通ってしまうほどのものだ。だから、そのときは驚いたもので、自分と同じくらい白い人間がいたのかと凝視してしまった。
あの時の得体の知れない安心感はなんだったんだろうか。
そんな事を考えながら背後で秋に特撮について熱く語っている鮫島の声を聞きながら刻んだ玉ねぎをバターで炒める。今日は晶と朝顔はいないが秋がいるので多少甘くしておかないと玉ねぎだけほじくり返すのである。それは作り手あるまじきだ、と思いつつ飴色になった玉ねぎを冷ましつつ、その時間でマッシュルームを細かく刻んで、人参をミキサーでペースト状にしていく。肉に可能な限り野菜を突っ込んでおかないと、朝顔や晶はともかくとして秋が絶対に食べないのだ。鮫島には付き合わせるようで申し訳ないが犠牲になってもらう。
冷めた飴色玉ねぎとマッシュルームを合挽きのミンチ肉と卵、牛乳、パン粉を練り混ぜる。地味にこの作業が好きで、気を付けないと延々とこねている上に自分の握力の強さを読み違えて混ぜた具材も潰しかねない。やがて小判型に整えて真ん中を凹ませ、熱しておいたフライパンにそっと置いていく。
ジュウ、といかにもな音を立てて焼いていると背後から秋にしがみつかれた鮫島が覗き込んできた。
「おぉ、ハンバーグかい?楽しみだねぇ」
「おー。焼いたら終わりだからもうちょい向こうで秋に遊ばれててくれ」
「おう、まかせろ!さめ!オレが遊んでやるんだからもっとたのしそうにしろよ!」
「遊んであげてるのこっちなんだけどなぁ?」
なんだかなぁ、と言いながらも秋を抱えて鮫島が離れていく。子供は苦手と言ってたっけ?と思いつつ普段連絡もなく飯だけたかりにくるのでそれくらいのことはしてもらわないとこっちも持たない、と三チビの中でも最も暴れん坊の秋を押し付けるあたり明彦も人が悪い。
さて、と蓋をしたフライパンの隣でソースを煮詰めている小鍋の火を見ながら明彦は洗い物に取り掛かった。
*
できたぞ、と言う言葉に秋より先に鮫島がすっ飛んできた。
「おい・・・秋は・・・」
「さめー!こら!オレをおいてくなバカ!!」
「悪いね、出来立てが逃げるから追いかけて捕まえなきゃと思ったのさ」
「はっ!!なるほどな・・・!?できたて、つかまえたか!?」
「完璧だよ」
「ごくろう!!」
なんの会話だ、と思いながら二人の前にプレートを置いていく。ほわぁ、とそんな間抜けな声を上げたのはどちらだろうか。目の前で湯気が揺らいでいる。
まず、目に付いたのは花形の目玉焼き。赤いケチャップソースがハンバーグを包み込むようにかけられている。白い米に、マグカップには黄金色のオニオンスープが注がれている。そしてレタス・胡瓜・プチトマトの簡単なサラダ。
「お昼から豪勢だねぇ。毎日こんな感じなのかい?」
「普段は夜の間に仕込みだけしてんだよ。アンタが急に来たから予定変更したんだっつーの」
「それはそれは。嬉しい限りだねえ」
「いや褒めてねーよ。イヤミだっつの」
悪態をつく明彦の服の裾を、秋がぐいと強く引っ張る。見てみればまだ食わねえのかと顔面で訴えてきていた。毒気を抜かれた明彦はため息をつきながら席につく。
「いただきます」
「いたっきます!」
「いただきまーす」
挨拶もそこそこに秋と鮫島は勢いよくお互いの目玉焼きに箸を突き立てる。何やってんだ、と思いつつ様式美なので明彦はほっといて黙々と食っていた。
以下、二人の行動である。
箸を固く握ったまま両者、睨み合う(鮫島は普通に見下ろしていただけだが)
「・・・やるな、サメ」
「そっちこそ。けど今日はわたしが早かったよね?」
「は!?オレだろ!?」
「いーや、わたしのが早かった。そうだろうあっきー?」
「あきひこにぃ!!オレ!!オレのが早かった!!」
「知らねえよ、ドローにしとけ」
「「やだー!!」」
箸を握ったまま二人揃って明彦に食ってかかる。当の明彦は酷くめんどくさそうに咀嚼していた。ごくんと飲み込んで箸を一旦置き、すっと手を出す。
それを見た二人も箸から手を離した。そして。
「「「じゃんけんポン!!!!!」」」
勢いよく手を降り出す。明彦がグー、秋と鮫島両名はチョキ。明彦の一人勝ちだ。
「くっ、まけた・・・」
「あきひこにぃジャンケンつよすぎー!!」
「俺が強いんじゃねえよ、お前らがジャンケン弱すぎんだ」
「あ、少しイキったね。しゅーちん、今この人イキったよ」
「イキった!あきひこにぃのイキりむしー!」
勝ったのに散々な言われようの明彦は、しかしこれも鮫島が来たときのいつものことだったからはいはいと受け流した。
大人所帯でいつもの食事は秋も含めて皆行儀よく食べている。しかし、たまにはこういう風に大騒ぎしながら食べる食事も悪くなく、何より普段お兄ちゃんぶってしかめっ面をしている秋が楽しそうだから、明彦は勝手に来る鮫島を強く拒むことはしなかった。
少し冷えたハンバーグは、ちょっとだけ人参の味がした。畳む
#CoC #明彦飯 #現代組
藤堂明彦と庭木のPM13:09
牛肉の塊を熱したフライパンの上に置く。その瞬間肉が焼ける音と匂いが響き渡って明彦はほうと息をついた。
「あきっちなにしてんのー!?」
「ギャアアアアアアアアアアアアア!?!?」
突然ここにいないはずの男の声が聞こえて、明彦は思わず拳を振りかぶった。
「いたい」
「自業自得だろうが。謝んねえぞ」
頬をパンパンに腫らせた庭木をじっとりと睨んで明彦はため息をついた。この男がどうやって伝えてもいない辺鄙な場所にあるこの家のことを知ったのかはわからない。が、庭木の職業柄簡単だったんだろうなと勝手に納得してフライパンへ視線を戻す。特に焦げている場所もないため続きを続行する。トングで焼き色を見ながらひっくり返し全ての面を焼いていく。
「肉?」
と、暇を持て余したのだろう庭木がひょっこり後ろから顔を覗かせた。じっとしているのが苦手なのは知っていたしそろそろきそうだなとも思っていたので明彦も別段怒ることなく返す。
「肉。ローストビーフ焼いてんの。腹減ってっから」
「へー・・・うまい?」
「・・・何。食いてぇの?」
「あきっちの手作りはおっかない気がすっけど、匂いうまそーで腹減った」
「わかった。食うな」
「ごめんなしゃい」
即座に土下座する庭木を呆れ顔で見ながらも手を止めない。やがてしっかり焼き目のついた肉を冷ましている間にあらかた片付けを済ませ、冷めてからアルミホイルで二重に巻いていく。
「それ何の音・・・」
「アルミホイル巻いてんの。こうやってしっかり中まで熱通すんだよ」
「俺その音嫌いだわ・・・」
「じゃああっち行ってろよ・・・」
「えー!?暇じゃん!!」
「・・・」
もう何も言えねえ、と明彦が遠い目をする。見えていない庭木はお構いなしで、明彦の周りをちょろちょろと動き回っていた。邪魔、というのも気が引けて明彦はダメ元でぐい、と庭木に玉ねぎとすりおろし器を押し付ける。
「ほ?」
「玉ねぎすりおろせ。暇なんだろーが」
「俺っち手元見えないけど、だいじょぶ?」
「安心しろ、手すっちまわないようにするとって付いてっから見えなくてもできる」
庭木を椅子に座らせてこう、と最初に明彦が後ろから庭木の手を取り体感で覚えさせる。きょとんとしていた庭木は次の瞬間にはぱぁ、と嬉しそうに顔をにたつかせて一人で玉ねぎをおろし始めた。取っ手がついて最後まで野菜をおろせるタイプのおろし器買ってよかった、と明彦がひとりごちながらソースの準備をする。芳秘蔵の赤ワイン、醤油、みりん、砂糖を合わせておく。
「あきっち終わったっぽい?」
「おー、ご苦労さん」
「変なとこない?できてる?」
「できてるできてる。上等だって」
少々しつこいくらい聞いてくる庭木に苦笑して答える。見えないから不安なのだろうな、というのはなんとなくわかるので怒る気にならないのだ。上等、と伝えられた庭木は嬉しいのを隠しもせずにへへ、と笑う。あとは任せてくれとすり下ろされた玉ねぎを預かった。
先ほど合わせた調味料へ玉ねぎを合わせてから軽く煮込む。その間に別の鍋で湯を沸かす。沸いたのを確認して明彦はそっと湯の中へアルミホイルをかぶせた肉を沈めた。十分後、火を止めてそのまま放置する。
その間に洗濯物だとか、庭木が割った植木鉢の片付けとか、風呂掃除とか、庭木がひっくり返したローテーブルを直したりだとか、何かと忙しかった。三十分程してから肉を取り出し更に常温で置く。芳の仕事部屋に入ろうとする庭木を阻止して、もうできるからとテーブルに無理やり座らせるのに1時間かかった。
肉の塊を薄くスライスする。それを丼に盛った白米の上へ乗せ、卵黄を落とす。周りに覚ましたソースを掛けて、庭木の前へ置いた。
「箸、使えんの?」
「使えるよーん」
明彦の一見バカにしたような質問に腹を立てることなく返事を返す。その質問が盲目の自分を気遣ってのことだとわかっていたからだ。伊達に彼の上司をしているわけではないのである。
明彦のいただきます、を真似してイタダキマス、と庭木がオウム返しする。咀嚼音が聞こえたので恐らく食べ始めたんだろうなと理解して庭木も一口、それを入れる。
まず感じたのは甘いソースと肉の柔らかさ。卵のとろりとした感触。そして冷たい肉やソースとは真逆のあたたかい白米の温度。
「・・・うま」
「下手くそじゃなくて悪かったな」
得意げな明彦の声が聞こえる。旨い。素直にそう思った瞬間庭木は丼にがっついていた。喉をつまらせてむせれば明彦が何かを渡してきた。飲めよ、と言われて飲めばほんのりあたたかいお茶だった。
不思議な気分だった。基本的には一人で飯を食うことが普通でたまに同じ空間に西郷か山田がいるだけだ。いるだけで今のように誰かと向かい合って食べることなんてしたことはなかった。何とも言えない、けれど嫌ではない気分だった。
やがて食べ終わる。明彦が食器を片付ける音を聞きながら庭木はのろりと口を開けた。
「また一緒に食べよ。飯」
明彦が無言になって、吹き出す。何かおかしいことでも言ったっけ?と首をかしげる庭木に明彦は次は連絡入れてから来いよ、と言った。畳む
藤堂明彦と庭木のPM13:09
牛肉の塊を熱したフライパンの上に置く。その瞬間肉が焼ける音と匂いが響き渡って明彦はほうと息をついた。
「あきっちなにしてんのー!?」
「ギャアアアアアアアアアアアアア!?!?」
突然ここにいないはずの男の声が聞こえて、明彦は思わず拳を振りかぶった。
「いたい」
「自業自得だろうが。謝んねえぞ」
頬をパンパンに腫らせた庭木をじっとりと睨んで明彦はため息をついた。この男がどうやって伝えてもいない辺鄙な場所にあるこの家のことを知ったのかはわからない。が、庭木の職業柄簡単だったんだろうなと勝手に納得してフライパンへ視線を戻す。特に焦げている場所もないため続きを続行する。トングで焼き色を見ながらひっくり返し全ての面を焼いていく。
「肉?」
と、暇を持て余したのだろう庭木がひょっこり後ろから顔を覗かせた。じっとしているのが苦手なのは知っていたしそろそろきそうだなとも思っていたので明彦も別段怒ることなく返す。
「肉。ローストビーフ焼いてんの。腹減ってっから」
「へー・・・うまい?」
「・・・何。食いてぇの?」
「あきっちの手作りはおっかない気がすっけど、匂いうまそーで腹減った」
「わかった。食うな」
「ごめんなしゃい」
即座に土下座する庭木を呆れ顔で見ながらも手を止めない。やがてしっかり焼き目のついた肉を冷ましている間にあらかた片付けを済ませ、冷めてからアルミホイルで二重に巻いていく。
「それ何の音・・・」
「アルミホイル巻いてんの。こうやってしっかり中まで熱通すんだよ」
「俺その音嫌いだわ・・・」
「じゃああっち行ってろよ・・・」
「えー!?暇じゃん!!」
「・・・」
もう何も言えねえ、と明彦が遠い目をする。見えていない庭木はお構いなしで、明彦の周りをちょろちょろと動き回っていた。邪魔、というのも気が引けて明彦はダメ元でぐい、と庭木に玉ねぎとすりおろし器を押し付ける。
「ほ?」
「玉ねぎすりおろせ。暇なんだろーが」
「俺っち手元見えないけど、だいじょぶ?」
「安心しろ、手すっちまわないようにするとって付いてっから見えなくてもできる」
庭木を椅子に座らせてこう、と最初に明彦が後ろから庭木の手を取り体感で覚えさせる。きょとんとしていた庭木は次の瞬間にはぱぁ、と嬉しそうに顔をにたつかせて一人で玉ねぎをおろし始めた。取っ手がついて最後まで野菜をおろせるタイプのおろし器買ってよかった、と明彦がひとりごちながらソースの準備をする。芳秘蔵の赤ワイン、醤油、みりん、砂糖を合わせておく。
「あきっち終わったっぽい?」
「おー、ご苦労さん」
「変なとこない?できてる?」
「できてるできてる。上等だって」
少々しつこいくらい聞いてくる庭木に苦笑して答える。見えないから不安なのだろうな、というのはなんとなくわかるので怒る気にならないのだ。上等、と伝えられた庭木は嬉しいのを隠しもせずにへへ、と笑う。あとは任せてくれとすり下ろされた玉ねぎを預かった。
先ほど合わせた調味料へ玉ねぎを合わせてから軽く煮込む。その間に別の鍋で湯を沸かす。沸いたのを確認して明彦はそっと湯の中へアルミホイルをかぶせた肉を沈めた。十分後、火を止めてそのまま放置する。
その間に洗濯物だとか、庭木が割った植木鉢の片付けとか、風呂掃除とか、庭木がひっくり返したローテーブルを直したりだとか、何かと忙しかった。三十分程してから肉を取り出し更に常温で置く。芳の仕事部屋に入ろうとする庭木を阻止して、もうできるからとテーブルに無理やり座らせるのに1時間かかった。
肉の塊を薄くスライスする。それを丼に盛った白米の上へ乗せ、卵黄を落とす。周りに覚ましたソースを掛けて、庭木の前へ置いた。
「箸、使えんの?」
「使えるよーん」
明彦の一見バカにしたような質問に腹を立てることなく返事を返す。その質問が盲目の自分を気遣ってのことだとわかっていたからだ。伊達に彼の上司をしているわけではないのである。
明彦のいただきます、を真似してイタダキマス、と庭木がオウム返しする。咀嚼音が聞こえたので恐らく食べ始めたんだろうなと理解して庭木も一口、それを入れる。
まず感じたのは甘いソースと肉の柔らかさ。卵のとろりとした感触。そして冷たい肉やソースとは真逆のあたたかい白米の温度。
「・・・うま」
「下手くそじゃなくて悪かったな」
得意げな明彦の声が聞こえる。旨い。素直にそう思った瞬間庭木は丼にがっついていた。喉をつまらせてむせれば明彦が何かを渡してきた。飲めよ、と言われて飲めばほんのりあたたかいお茶だった。
不思議な気分だった。基本的には一人で飯を食うことが普通でたまに同じ空間に西郷か山田がいるだけだ。いるだけで今のように誰かと向かい合って食べることなんてしたことはなかった。何とも言えない、けれど嫌ではない気分だった。
やがて食べ終わる。明彦が食器を片付ける音を聞きながら庭木はのろりと口を開けた。
「また一緒に食べよ。飯」
明彦が無言になって、吹き出す。何かおかしいことでも言ったっけ?と首をかしげる庭木に明彦は次は連絡入れてから来いよ、と言った。畳む
#CoC #うちよそ #明彦飯
藤堂明彦と射守屋衣慧のPM19:57
明彦はどきまぎしながらそのマンションの一室のチャイムを鳴らす。以前驚かせようと無言で場所を(職権乱用し)調べアポ無しで突入したところ笑いながら説教させたのを思い出す。今回は事前連絡をしたから大丈夫だ、と思っているとはーいと明るい声がドア越しに聞こえて、がちゃと開かれ招かれる。
「待っとったで、アキ!」
満面の笑みを浮かべながらドアを支える衣慧を見て、思わず明彦も笑った。
関西圏のとある集会、明彦はそれに参加するために衣慧を訪ねた。何の集会かというとサバイバルゲーム、所謂サバゲーの定例集会だ。月に何度か、店舗ごとに集会を開き初心者・玄人問わず一緒にサバゲーを楽しめるイベントである。衣慧の知り合いの店舗の集会が近かった、というのもあり参加に漕ぎ着けたのだ。
サバゲー初心者です、といったフル装備の明彦をうんうんと満足げに見ながら衣慧がバンバンと背中を叩く。
「似合っとるやん!ヘルメットはなんやおもろいことになっとるけど!」
「・・・ブカブカする」
「まあ一回目やからなぁ、怪我せえへんようにかぶっとき!慣れてきたら帽子とかに変えたらええし!」
もぞ、とヘルメットを動かす明彦を微笑ましく見ながら、集合をかける声が耳に届いた衣慧はぐいと明彦をひっぱる。
「ほらアキ!初陣やで!頑張っといで!」
「お、おう!」
上擦った声で返事をして走っていった明彦の背中に行ってらっしゃい!と衣慧は手を振った。
集会が終わり、店舗から二人が撤収したのは日も大分と傾きかけた夕方頃だった。いろんなチームに混ぜてもらいながら3ゲームたっぷり遊んだ明彦はえらくご機嫌で、また疲れた様子を見せない彼に衣慧が感心したように声をかける。
「アキ、ほんま体力あるんやなぁ!というか、初めてするサバゲであそこまで動けへんで普通!」
衣慧の脳裏には単身で敵陣へ突っ込んでいく明彦の姿がリプレイされている。初心者特有の先走って突っ込んでいく傾向だな、と誰もが微笑ましく笑っていた所自分に向けられた銃口を察知して物陰へ隠れたり、スナイパーの位置を見つけたと味方に伝えた後前衛へ繰り出し三人キルを取ったのだ。敵も味方も驚かせながら明彦自身も楽しそうに撃ったり撃たれたり。帰り間際等は玄人たちに囲まれ肩や背中を叩かれながら目を白黒させていた明彦が面白かった。
本人よりも興奮しているかもしれない衣慧に、明彦は引きつった笑みを浮かべるしかない。まさか仕事でよく似たことをしています、とは言えないためだ。口は災いのもとである。無難に運動好きだから、と答えて無理やり話題を変換した。
「と、所でさ。いささん腹減ってね?」
「ん?あー、そいやあ観戦しとって興奮して昼飯食うの忘れとったから腹減ったなぁ。どっか寄ろか?」
「じゃあ、パン屋」
「ほえ?」
思っていた所と違う場所をきいて衣慧がきょとんとする。明彦はおずおずと自分を指さした。
「俺、作るよ。泊めてもらうし」
悪いわ、と断る衣慧に実は準備してきたと言えば観念したように苦笑してじゃあ、と任せてもらった明彦はパン屋に立ち寄りバケットを二本購入した。何がでるんやろか、と明彦を見る衣慧の目は興味津々に輝いていて、絶対うまいの作ろうと決心する。
さて衣慧の部屋に戻ってきた明彦は冷蔵庫に入れさせてもらっていたジップロックを取り出す。
「アキ、これなんや?サバ?」
「うん。塩ヨーグルトで付けてある」
「ヨーグルト!?すごい珍しい組み合わせやな・・・!」
「安心しろよ、ゲテモノじゃねえから」
そう言って笑って、ふと明彦は衣慧がどことなくそわそわしているのに気がついた。
「・・・どした?まじでゲテモノじゃないぞ?」
「あー、そうやなくてな?自分ちでなんもせんの落ち着かんくて」
「じゃあ、これ。三等分に切ってから真ん中で半分に切ってマーガリン塗って焼いといてくれ」
そう言いながら二本のバケットを衣慧に渡せば気使わせてごめんなぁ、と苦笑しながらも取り掛かってくれる。一人暮らしだけあって手際がいいなぁ、と思いながらフライパンにオーブンシートを敷き、皮の面から焼いていく。しばらくして皮の面に綺麗な焼きいろが着いたのを確認して裏返し蓋をする。火を弱めて蒸し焼きにしている相田にトマトと赤玉ねぎ、レモンを輪切りにする。
「アキー、パン焼けたで!」
「あんがと、じゃあレタスちぎってくれね?挟める感じで」
「任せとき!」
ふんす、と得意げに鼻を鳴らしながら返事をする衣慧を心強く思いながら明彦は小ぶりのじゃがいもを皮ごとくし切りにし小鍋で揚げ焼きし、パセリと塩を塗す。
丁度蒸しあがった鯖の小骨を取り除き、衣慧が用意してくれたバケットにレタスやトマト等野菜と一緒に挟んでいく。
最後に塩コショウで味を整えてテーブルへ並べた。
「お待たせ」
「おおお・・・!途中からハンバーガーかな思うてたんやけど魚って珍しいなぁ!」
「サバサンド、って言うらしいぞ。秋奈さんから教えてもらった」
「・・・サバゲーやから?」
「・・・わりぃか」
「ほんまに!?っふふ、洒落効いとるやん!」
不貞腐れた明彦の頭を乱暴になでてて、さてさてと衣慧が両手を合わせる。
「いただきます!」
「おう」
ハツラツとした声で食前の挨拶をして、衣慧は大きな口でかぶりつく。最初見たときはどうなるのか想像もつかなかった塩ヨーグルトに付けられた鯖は生臭さは一切なくふっくらと仕上がっている。かりっと焼かれた皮にトマトとレモンの違う酸味が味を引き締める。少し焼いたバケットの香ばしさと甘さもマッチしている。
「いささん、これ」
「おん?マスタード?」
明彦が渡した容器に入れられたマスタードソースを言われるままちょっと付けてかぶりつく。ぴり、とした辛味が先ほどとは違う旨さを舌に訴えて来た。
「うっわ味変わったわ!アキすごない!?サバはふわふわやし臭ないし!ポテトも塩加減ばっちりやで!」
「そっか、よかった」
そう言ってへにゃりと明彦が笑う。うまいうまいと咀嚼する衣慧にホッとした。
「そいやあ明日には帰るんやな?」
後片付けを二人でしながら衣慧は明彦を見上げながら聞いてきた。うん、と答えると残念やわぁ、と本当に残念そうに言われて少し名残惜しくなる。なんとなく、明彦は思っていたことを口に出した。
「また、一緒に遊ばね?今日はいささんゲーム出てなかったし、一緒のチームで」
「! ええよ!今度はボクがそっち行くわ!」
「待ってる。あ、後でおすすめの武器教えてくれよ。ハルさん達・・・向こうの友達にも布教しとくからさ」
そんな他愛ない話をしながら、次の約束をしたのだ。畳む
藤堂明彦と射守屋衣慧のPM19:57
明彦はどきまぎしながらそのマンションの一室のチャイムを鳴らす。以前驚かせようと無言で場所を(職権乱用し)調べアポ無しで突入したところ笑いながら説教させたのを思い出す。今回は事前連絡をしたから大丈夫だ、と思っているとはーいと明るい声がドア越しに聞こえて、がちゃと開かれ招かれる。
「待っとったで、アキ!」
満面の笑みを浮かべながらドアを支える衣慧を見て、思わず明彦も笑った。
関西圏のとある集会、明彦はそれに参加するために衣慧を訪ねた。何の集会かというとサバイバルゲーム、所謂サバゲーの定例集会だ。月に何度か、店舗ごとに集会を開き初心者・玄人問わず一緒にサバゲーを楽しめるイベントである。衣慧の知り合いの店舗の集会が近かった、というのもあり参加に漕ぎ着けたのだ。
サバゲー初心者です、といったフル装備の明彦をうんうんと満足げに見ながら衣慧がバンバンと背中を叩く。
「似合っとるやん!ヘルメットはなんやおもろいことになっとるけど!」
「・・・ブカブカする」
「まあ一回目やからなぁ、怪我せえへんようにかぶっとき!慣れてきたら帽子とかに変えたらええし!」
もぞ、とヘルメットを動かす明彦を微笑ましく見ながら、集合をかける声が耳に届いた衣慧はぐいと明彦をひっぱる。
「ほらアキ!初陣やで!頑張っといで!」
「お、おう!」
上擦った声で返事をして走っていった明彦の背中に行ってらっしゃい!と衣慧は手を振った。
集会が終わり、店舗から二人が撤収したのは日も大分と傾きかけた夕方頃だった。いろんなチームに混ぜてもらいながら3ゲームたっぷり遊んだ明彦はえらくご機嫌で、また疲れた様子を見せない彼に衣慧が感心したように声をかける。
「アキ、ほんま体力あるんやなぁ!というか、初めてするサバゲであそこまで動けへんで普通!」
衣慧の脳裏には単身で敵陣へ突っ込んでいく明彦の姿がリプレイされている。初心者特有の先走って突っ込んでいく傾向だな、と誰もが微笑ましく笑っていた所自分に向けられた銃口を察知して物陰へ隠れたり、スナイパーの位置を見つけたと味方に伝えた後前衛へ繰り出し三人キルを取ったのだ。敵も味方も驚かせながら明彦自身も楽しそうに撃ったり撃たれたり。帰り間際等は玄人たちに囲まれ肩や背中を叩かれながら目を白黒させていた明彦が面白かった。
本人よりも興奮しているかもしれない衣慧に、明彦は引きつった笑みを浮かべるしかない。まさか仕事でよく似たことをしています、とは言えないためだ。口は災いのもとである。無難に運動好きだから、と答えて無理やり話題を変換した。
「と、所でさ。いささん腹減ってね?」
「ん?あー、そいやあ観戦しとって興奮して昼飯食うの忘れとったから腹減ったなぁ。どっか寄ろか?」
「じゃあ、パン屋」
「ほえ?」
思っていた所と違う場所をきいて衣慧がきょとんとする。明彦はおずおずと自分を指さした。
「俺、作るよ。泊めてもらうし」
悪いわ、と断る衣慧に実は準備してきたと言えば観念したように苦笑してじゃあ、と任せてもらった明彦はパン屋に立ち寄りバケットを二本購入した。何がでるんやろか、と明彦を見る衣慧の目は興味津々に輝いていて、絶対うまいの作ろうと決心する。
さて衣慧の部屋に戻ってきた明彦は冷蔵庫に入れさせてもらっていたジップロックを取り出す。
「アキ、これなんや?サバ?」
「うん。塩ヨーグルトで付けてある」
「ヨーグルト!?すごい珍しい組み合わせやな・・・!」
「安心しろよ、ゲテモノじゃねえから」
そう言って笑って、ふと明彦は衣慧がどことなくそわそわしているのに気がついた。
「・・・どした?まじでゲテモノじゃないぞ?」
「あー、そうやなくてな?自分ちでなんもせんの落ち着かんくて」
「じゃあ、これ。三等分に切ってから真ん中で半分に切ってマーガリン塗って焼いといてくれ」
そう言いながら二本のバケットを衣慧に渡せば気使わせてごめんなぁ、と苦笑しながらも取り掛かってくれる。一人暮らしだけあって手際がいいなぁ、と思いながらフライパンにオーブンシートを敷き、皮の面から焼いていく。しばらくして皮の面に綺麗な焼きいろが着いたのを確認して裏返し蓋をする。火を弱めて蒸し焼きにしている相田にトマトと赤玉ねぎ、レモンを輪切りにする。
「アキー、パン焼けたで!」
「あんがと、じゃあレタスちぎってくれね?挟める感じで」
「任せとき!」
ふんす、と得意げに鼻を鳴らしながら返事をする衣慧を心強く思いながら明彦は小ぶりのじゃがいもを皮ごとくし切りにし小鍋で揚げ焼きし、パセリと塩を塗す。
丁度蒸しあがった鯖の小骨を取り除き、衣慧が用意してくれたバケットにレタスやトマト等野菜と一緒に挟んでいく。
最後に塩コショウで味を整えてテーブルへ並べた。
「お待たせ」
「おおお・・・!途中からハンバーガーかな思うてたんやけど魚って珍しいなぁ!」
「サバサンド、って言うらしいぞ。秋奈さんから教えてもらった」
「・・・サバゲーやから?」
「・・・わりぃか」
「ほんまに!?っふふ、洒落効いとるやん!」
不貞腐れた明彦の頭を乱暴になでてて、さてさてと衣慧が両手を合わせる。
「いただきます!」
「おう」
ハツラツとした声で食前の挨拶をして、衣慧は大きな口でかぶりつく。最初見たときはどうなるのか想像もつかなかった塩ヨーグルトに付けられた鯖は生臭さは一切なくふっくらと仕上がっている。かりっと焼かれた皮にトマトとレモンの違う酸味が味を引き締める。少し焼いたバケットの香ばしさと甘さもマッチしている。
「いささん、これ」
「おん?マスタード?」
明彦が渡した容器に入れられたマスタードソースを言われるままちょっと付けてかぶりつく。ぴり、とした辛味が先ほどとは違う旨さを舌に訴えて来た。
「うっわ味変わったわ!アキすごない!?サバはふわふわやし臭ないし!ポテトも塩加減ばっちりやで!」
「そっか、よかった」
そう言ってへにゃりと明彦が笑う。うまいうまいと咀嚼する衣慧にホッとした。
「そいやあ明日には帰るんやな?」
後片付けを二人でしながら衣慧は明彦を見上げながら聞いてきた。うん、と答えると残念やわぁ、と本当に残念そうに言われて少し名残惜しくなる。なんとなく、明彦は思っていたことを口に出した。
「また、一緒に遊ばね?今日はいささんゲーム出てなかったし、一緒のチームで」
「! ええよ!今度はボクがそっち行くわ!」
「待ってる。あ、後でおすすめの武器教えてくれよ。ハルさん達・・・向こうの友達にも布教しとくからさ」
そんな他愛ない話をしながら、次の約束をしたのだ。畳む
#現代組 #うちよそ #R15
まあお決まりと言えばお決まりのパターン
「じゃあせんせーのデビュー戦勝利を祝ってかんぱーい」
「か、乾杯」
ごちん、と鈍い音を立てながらビール缶同士がぶつかる。適当に買ったつまみだのジャンクフードだのをあたりに広げて雫月は目の前の男にへらりと笑いかける。長身を縮こまらせるように座った男は彼の大学の非常勤の講師だった。名前は浅霧十鵲。変わった名前だったから妙に頭に残っていた。
何故講師の彼が雫月の下宿先にいるかというと話は数時間前に遡る。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「あれ、先生ちゃう?」
趣味のサバイバルゲーム会場にて、友人の相田雄輔の間延びした声に雫月が目を瞬かせる。あれ、と指さされた方を見ると確かに見覚えのある姿がそこにはあった。
「なにしてんだろこんなとこで・・・ってまー普通に考えりゃサバゲーだよな」
「そうやったとして意外すぎへん?・・・佐辺君、またなんかしたんちゃうの?見かけたから追っかけて来たとかありそうやん」
「いや何もしてねぇ、じゃなくてあいちゃん俺をなんだと思ってんの?」
「問題児」
「割と真面目に生きてんだけどなぁ」
雄輔の冗談(?)に苦笑で返して雫月が歩を進める。行き先がわかった雄輔は苦笑を一つこぼしてその後ろについて行く。
難なく人混みをかいくぐり、目的の人のすぐ隣まで行ってぽんと軽く叩く。
「こんな所で何してんすか?せーんせ」
返事の代わりにじゃこ、と鈍い音が響く。雫月が固まり雄輔が焦ったように目の前の銃口をずらしてくれた。
「浅霧先生、人に銃口向けたらあかんって」
「・・・えっと、どちら様でしょうか」
雄輔が絶句する。まあ非常勤だし覚えてなくてもしょうがねえな、と無理やりそう思うことにして雫月はあんたの生徒ですと頬を引き攣らせた。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
「いやほんとせんせ人の事覚えて無さすぎでしょ」
けたけたと笑う雫月に十鵲が気まずそうにビールを口に含む。雄輔は別の用事が有るからと先に別れたため今はいない。さっき謝ったじゃないですか、と拗ねる姿に雫月の中の十鵲の印象が崩れては組み直される。
同じ講座を受けている友人も雫月も彼に対して何を考えているのか分からない、少々気味の悪い講師だった。素性もしれないし最低限の会話しかしない。余り関わりたくない類の人間である、と言うのが彼への第一印象だ。
しかし喋って見れば結構すぐ拗ねたり、デビュー戦の反省点を言えば次はこうすると負けず嫌いを見せてきたり。雫月の冗談に本気で驚いたり少し笑ったりと、かなり感情豊かだった。何より自分が興味のあることに対して饒舌に喋るのだ。聞き心地のいい声とまとまっていてわかりやすい話し方に雫月も思わず踏み込んで質問をして、と会話が途切れなかった。
時計が日付を超えたあたりで、雫月は十鵲に声を掛けようとした。2人で相当飲んだし、終電も無いだろうから泊まっていけと言うつもりだった。現にそこそこアルコールに強い自分が目を回している。結構早い段階で顔を赤くしていた講師1人追い出すのも気が引けたのだ。
その言葉は、十鵲の唇でせき止められた。
酔ったらキス魔になるタイプなんだろうな、と緩く考えていた雫月はしかし次の瞬間長身に押し倒されて組み敷かれる。
「ちょ、せんせ?」
退いて、と薄くは無い胸板を押し返す。しかし熱に浮かされた目はずっと物欲しそうに雫月を見ていた。こくり、と喉が鳴る。どちらのものかは分からない。まずいと訴えていた理性は十鵲の熱とアルコールに当てられて溶かされる。
やがて十鵲が雫月の唇を再度塞いだ。大きな手が雫月のシャツの下に潜り込んで、そして。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
雫月はぱち、と目を覚ました。薄ら寒いのは服を着ていないからだし腰が痛くて下肢がベタつくのはまあつまりそういう事なんだろう。思ったよりダメージねえな、と思いながら煙草に手を伸ばす。誰かと寝た後の習慣だった。身体に回された長い腕が少し邪魔だった。動いたからか引き込むように腕に力が込められる。跳ねている髪を梳いたのはなんとなくだった。
薄らと十鵲が目を開ける。素っ裸の雫月を見て跳ねるように飛び起きた。
「・・・」
「おはよ、せんせ」
鬱血と歯型だらけで、しかも掠れた声の雫月と下着だけしか着けていない自分の状態で全て察したのだろう。
「・・・すいません、でした・・・ッ!」
下着1枚で土下座された。
▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽
雫月がシャワーから出ると十鵲が抜け殻のような顔でテーブルに簡単な食事を並べている光景に目を白黒させる。
「え、何。つか材料とかなかったよね?」
「買ってきて作りました・・・」
「別に帰ってよかったのに」
「帰れるわけないでしょう!?その、無理させましたし・・・」
あっけからんとした雫月の言葉に十鵲が目を剥く。その直後目に見えて落ち込んだ講師にわかりやすいなぁと苦笑した。
「まあせんせーは気持ちよかったかも知んないけど俺全然イってねえし、あちこち痛いし」
「う」
「中出しされたし、俺処女食われたし」
「・・・すいませ」
「でもメシ作ってくれたし、それでチャラでいーよ」
は?と思わず十鵲が素っ頓狂な声を出す。並べられたサンドイッチをひとつ摘んで口に放り込む。自分の為に食事を用意されたのはいつ以来だっけと考える。
「下手くそだったけどね」
よかったね、女の子じゃなくて俺で。大ダメージを受けたのか崩れ落ちた十鵲に雫月は嘲笑ではない笑みをひとつへらりと零した。
その後、
「わ、私も童貞でしたからね!?」
と言うとてつもなくどうでもいい十鵲のカミングアウトに雫月はものすごく生ぬるい眼差しでそっかぁ、と呟くのだった。
「なんですかその目は!!」
「いや、初めてなら下手くそでもしょうがねえよ、うん」
「慰めてるんですか!?貶してるんですか!?」畳む